『ゴジラ』シリーズに『怪獣8号』の大ヒットも…なぜ日本人は「怪獣」にひかれるのか
■魅力的な作品を生み出す“匠の技”
加えて、日本の怪獣作品はクオリティが高く、存分に夢中になれる要素が詰まっている。 現在より技術の劣る昭和の時代の作品であっても、ゴジラのゴツゴツした肌感に、モスラのもふもふ感など、造りはリアルでディテールに凝っている。またストーリーも単に“怪獣が暴れて倒される”というだけではなく、災害のメタファーとしての怪獣や、それにより日常を壊された人々の生活や心情が丁寧に描かれている。まさに“匠の技”だ。 このあたりは『怪獣8号』もまさにそうで、スリルある展開と人間ドラマで早く続きが読みたいと思わせる反面、デザイン性や画力の高さには思わずページをめくる手を止めて眺め入ってしまう。見た目も中身も優れた怪獣作品が身近にここまであふれていれば、誰だって怪獣好きになりそうなものだ。
■抑圧しがちな国民性も怪獣好きの一因?
先に挙げたような繊細な技術や感性は、日本が持つ国民性としてプラスに捉えられることが多い。一方で“自己主張をしない”、“周りの目を気にする”など、とかく抑圧的な特性が目立つのも事実だ。 この日頃から積もり積もった鬱憤を解消してくれるのもまた、怪獣作品の重要な役割の一つかもしれない。忖度なく街や世界をぶち壊してくれる怪獣たちの姿に、カタルシスを得るという人も少なくないはずだ。もちろんそれは万国共通のことだろうが、普段から抑圧度合が強ければ強いほど、怪獣に惹かれる強度も上がるのではないか。 このように、『ゴジラ』に代表される「怪獣」は、日本人にとってはことさら身近な存在であり、良質な怪獣作品を大量に世に送り出すだけの地力も兼ね備えているように思う。そして、そこから得られるカタルシスが、日本人の怪獣好きをさらに後押しするのではないだろうか。 私たちの心象風景に刻まれた怪獣たち。これからも怪獣大国・日本の国民を、ますます虜にしてくれることだろう。
霜月はつか