学食停止問題から1年 業者の入札方法を見直し、委託費は約4倍 「おかずの種類が豊富になった」【広島発】
突然、学食がストップし、教員が授業の合間にパンやバナナなどの食料調達に追われた「学食停止問題」から1年。広島県内のみならず全国各地に影響を及ぼした問題は何を残したのか。教訓をいかす今の姿を取材した。 【画像】広島市立沼田高校の食堂
入札方法を見直し、委託費は約4倍
広島・三次市の県立三次高校。午後0時半過ぎ、食堂はまさにお昼時でたくさんの生徒たちがおかずを受け取っている。 ある寮生は「今、受験勉強でかなりしんどい時期ですが、こうして温かいご飯を食べることでもう一歩頑張ろうという気持ちになります」と笑顔で話していた。 寮生にとっての何気ない日常。しかし1年前、この“当たり前”が崩れた。2023年9月、食堂の運営を委託されていた広島市の業者が経営破綻し、突如、食事の提供がストップ。県内のみならず全国各地で大きな影響を出し、三次高校では教員たちが授業の合間に、パンや果物など寮生の食料調達に追われた。 あれから1年。三次高校の山垣内雅彦校長は「世の中の状況が刻々と変わっているので、食材費の問題を含めて、その都度お互いの立場で情報交換をしながら、適正な食事が提供できるように努めています」と話す。 当時、課題としてあがったのが、業者を選ぶ際に「価格のみ」で評価する一般競争入札だ。経営破綻した業者は他社と比べて極端に低い価格で入札し、結果的に物価高騰や人件費増加などで食事の提供ができなくなった。 そのため2024年度から経営状況や材料の調達方法、障がい者雇用率などを総合的に評価する方法に変更。おおむね3年間の契約で、県立高校6校分の業者への委託費(主に人件費)は、これまでよりも4倍弱、増えたという。各家庭が負担する「1日3食の材料費」についても1割値上げ。この先も物価高騰の影響が懸念されることから、事前に保護者の理解を得て、学校側は業者とのコミュニケーションを密にしている。
市が人件費負担で「おかずが豊富に」
一方、寮生の食事だけでなく、一般生徒の昼食も担う食堂がストップした広島市立沼田高校。 2024年4月から食堂の営業を再開した。食券の販売機は「かけうどん250円」、「カレーライス350円」など高校生に買いやすい価格設定。また、生徒の発案でテイクアウトメニュー「フライドポテト100円」「からあげ串150円」も用意されている。 沼田高校ではPTAが業者と契約していたが、2024年度からは寮の設置者である広島市が主体となって契約し、食材費以外の人件費などを市が負担することになった。そのため、量・質ともに充実しているという。 生徒たちは「種類が豊富になったなという気がする」「おかずが2種類あって、自分が好きほうを選べるので、いつも4時間目が終わったらダッシュで来ている」と満足そう。 新たな運営業者は生徒や教職員に食事内容についてのアンケート調査を行っている。学業の源となる“食の安心安全”を確保するため、様々な意見交換が活発になっているようだ。沼田高校の三浦秀行校長は「生徒、また寮生も含めて毎日おいしく食べさせていただいています」と話す。 1年前の問題を経て、教訓をいかし良い方向に進んだ側面もある。ただ、今も続く物価高騰の影響で2024年9月に数十円値上げをした学校があるほか、コメの値段が高く、業者は頭を痛めている。今後も注視していく必要がありそうだ。 (テレビ新広島)
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