ブレーキ液は、オイル(油)じゃない!?
「油圧」なのに、“油”じゃない!?
現行バイクの多くが装備する油圧式ディスクブレーキは、パスカルの原理(密閉容器の中の流体は、ある一点に受けた圧力をそのままの強さで、すべての部分に伝える)を用いて制動力を生み出しています……難しい理屈はともかく、ブレーキレバーやブレーキペダルのマスターシリンダーには液体の入ったタンクが繋がっているので(マスターシリンダーとタンクが一体式の場合もアリ)、この液体を使ってブレーキを効かせているんだな……というのは、なんとなくイメージできるでしょう。 【画像】ブレーキ液と油圧式ディスクブレーキを画像で見る(12枚)
この液体を「ブレーキオイル」と呼ぶ人が多いのですが、じつは油(オイル)ではありません。油圧式ディスクだから油(オイル)だと思って不思議はないのですが、正しくは「ブレーキフルード(Brake Fluid)」と呼びます(Fluid=液体、流体の意味)。 ただし、かなり昔のクルマ(4輪車)の油圧式ディスブレーキには、鉱物油系のブレーキフルードが使われていたので、そちらはブレーキオイルと呼んでも間違いではないでしょう。しかし現在のブレーキフルードの素材は油(オイル)ではなく、ポリエチレングリコールモノエーテルと呼ばれる物質をベースに作られるモノが主流です。
沸騰しにくい特性が重要!
油圧式ディスクブレーキは、ブレーキレバーやペダルを操作してマスターシリンダーに発生したブレーキフルードの圧力を、ブレーキホースを介してブレーキキャリパーに伝え、ピストンがブレーキパッドをディスクローターに押し付ける摩擦力でブレーキが効きます。
そのため、ブレーキフルードには圧力による体積の変化が小さいことが要求されます。 また、ブレーキをかけるとブレーキパッドとディスクの摩擦によって高い熱が発生しますが、その熱でブレーキフルードが沸騰して気泡が発生してしまうと、レバーやペダル操作をしても気泡がつぶれるだけで圧力がブレーキキャリパーのピストンに伝わらず、ブレーキが効かなくなってしまいます(この現象を“ベーパーロック”と呼ぶ)。 そこでブレーキフルードには高温でも沸騰しにくい特性が重要になりますが、これらの条件を満たす物質が、ポリエチレングリコールモノエーテルなのです。