サッキの目に狂いはなかった。トリノ監督は「戦術家ではなく戦略家」。バノーリ監督は何が優れているのか?【コラム】
⚫️イタリアサッカー界の重鎮サッキも絶賛「イタリアが進むべき道」
第2戦は、昨季のUEFAヨーロッパリーグ(EL)王者のアタランタに2-1と勝利。先制点を許したものの、イバン・イリッチと新戦力のチェ・アダムスのゴールで逆転。ドゥバン・サパタと最前線でコンビを組んだアダムスは、豊富な運動量で、相手守備陣を撹乱し、サパタとも絶妙なコンビネーションを見せ、すでにチームにフィットしていることを実証した。 トリノは最後、アタランタに押し込まれる時間が続いたが、時折放つ鋭いカウンターで敵陣に襲いかかり、ただ守りを固めるだけではないことも証明している。ブオンジョルノの後釜として、新加入したサウール・ココも、2試合で3バックの中央を任され、アタランタ戦では、マテオ・レテーギにヘディングシュートを許して、先制点を献上するミスを犯したが、読みの鋭いインターセプトやフィジカルの強さを随所に発揮し、非凡な能力を示している。 このスペクタクルな一戦を褒め称えたのが、イタリアサッカー界の重鎮アリゴ・サッキだ。「この試合を観ていて、私はリモコンボタンを押し間違え、海外の試合にチャンネルを合わせてしまったのかという錯覚に陥った。セリエAの試合には思えず、ヨーロッパのカップ戦、あるいは、プレミアリーグ、ラ・リーガの一戦を観ているかのように思えたのだ。この試合内容に満足したよ」 「イタリアサッカーが、過度な戦術主義、中盤と攻撃陣の数を減らし、守備に重点を置く古い短所から解放されたいのであれば、今日のようなサッカーを続けなければならない。これこそがイタリアが進むべき道だ」と、攻守においてインテンシティの高かった一戦を手放しで絶賛した。
⚫️トリノの新監督、パオロ・バノーリという男
大御所を唸らせたトリノを今季から指揮するのが、パオロ・バノーリだ。昨シーズンはセリエBのベネツィアを指揮し、レギュラーシーズンを3位でフィニッシュ。プレーオフでも、下位のチームに下剋上を許さず、セリエA昇格にチームを導いた。その手腕を買われて、昨季限りでイバン・ユリッチが退任したトリノの新監督に抜擢された。 セリエAは初挑戦ながら、アマチュアリーグのクラブの指導者として監督業をスタートし、アンダー世代のイタリア代表の指揮官や海外のクラブでも監督を務めた実績のある経験豊かな52歳だ。選手時代には、ベネツィア、パルマ、フィオレンティーナなどで活躍。スコットランドのレンジャースやギリシャのアスリティコスでもプレー。パルマが制した1998/99シーズンのUEFAカップ(現・UEFAヨーロッパリーグ)では、マルセイユとの決勝で左サイドMFで先発フル出場し、優勝の美酒を味わった。イタリア代表としても2試合のキャップ数を誇る、経験値の高いプレーヤーだった。 実は、サッキとは旧知の仲で、2010年、U-16イタリア代表の助監督に任命したのが、当時ユース部門強化責任者を担っていたサッキだった。FIGC(イタリア・サッカー連盟)のマウリツィオ・ビッシディ・コーディネーターの紹介により、サッキはバノーリをU-16イタリア代表のスタッフに招き入れた。 「最初に彼に会った時、とても良い印象を得た。私は先ず、監督や選手としての能力よりも、その人物の性格を見る。バノーリはとても素晴らしい人間に思えた。それは彼にとって大きなアドバンテージだった。彼は人の話しに耳を傾ける、大柄な人間ではない。そして、学ぶことに意欲を持っていて、ピッチの上の仕事に打ち込み、選手たちとの会話も大切にしている男だ」そして、サッキの目に狂いはなかった。