もはや舵取り役だけじゃない横浜FM喜田拓也「ずっとこだわってやっていた」攻撃参加で逆転劇牽引
[6.19 J1第13節延期分 横浜FM 3-2 広島 ニッパツ] 鮮やかな逆転劇の口火を切ったのは、誰よりもチームのバランスを気にかけてきた男の果敢な攻撃参加だった。 【動画】女優が日本代表戦に来場→“一般人”として地元TVのインタビュー受ける 10人の広島に1-2と勝ち越されて迎えた後半42分、横浜F・マリノスMF喜田拓也はスローインの流れから左サイドの深い位置でパスを受けると、中央に向かって正対しながらノールックのスルーパスを配球。これに反応したFW宮市亮のクロスから、FWアンデルソン・ロペスの同点ゴールが生まれた。 今季はハリー・キューウェル新監督のもと、新たに導入された4-3-3システムのアンカーが主戦場となっていた喜田。それでも守備に専務するのではなく、得点が必要な場面では主に右のハーフスペースに顔を出すことで、仕上げの崩しに関わる姿もたびたび見られ、着実にプレーの幅を広げてきていた。 この日の同点ゴールも、そうした取り組みが実った形だった。喜田は「今季はアシストの一つ前もあったり、結構点に絡めていたので、そういうところに気づいていただいてありがたい(笑)」と控えめに笑みを浮かべつつ、「自分がどうチームに貢献していけるかの幅はちょっとずつ広げていけているというところで、あのシーンもあそこに顔を出せた」と前向きに振り返った。 またこれまでの試合ではあまり直接連係する機会のなかった宮市とも、しっかりリズムを合わせていた。「必ず(宮市が)あそこに来てくれると思って出した。彼も『来ると思っていた』と言ってくれたし、意思疎通もできていた。ロペスもよく決めてくれたし、ああいうのはチームの結果にも直結するので」。日頃のトレーニングから充実したコミュニケーションができていることもうかがえるワンシーンだった。 普段は攻撃的なポジションではない喜田にとって、こうした攻撃参加の機会は決して多くは巡ってこない。それでも少ない機会をうかがっているからこそ、「何でもかんでも行けばいいというものではないし、タイミングが大事になるので、バランスもしっかり舵を取りながらというのが大事になる」という状況判断を研ぎ澄ませ、こだわりを持って取り組んできた。 「ポジション柄それ以外のタスクも多いので、その中の優先順位をしっかり正確に決断、判断をするというのはずっとこだわってやっていた。タイミングも周りと合っているし、(シュートやクロスを)やり切って終われている場面もある。もちろんそこでゴールやアシストができればいいけど、今日みたいな絡み方もあるし、今までも得点につながるシーンを作れているので、そこはポジティブに捉えている」 危機察知力やカバーリングといった自身の強みだけに甘んじることなく、アタッキングフットボールの実現に向けてさらなる努力を重ねてきた主将が口火を切った逆転劇。その働きは、味方のミスを帳消しにしたという点でも大きな価値があった。 広島に一時勝ち越しを許したゴールは、左SBで緊急起用されたDF渡邊泰基のスローインが奪われたのが発端。「ミスはどうしても人間がやるスポーツなのであるし、それはチームで共有していた。あそこで顔を下げないところは声をかけていた」。そう事もなさげに振り返った喜田は「会場の雰囲気もそうさせてくれたし、何より諦めなければそういうことが起きるのは初体験ではない。後はないと思っていたし、勝つしかなかったので、それを自分たちに言い聞かせていた」と強気な姿勢を誇りつつ、「マリノスらしさみたいなものは皆さんに感じてもらえるゲームだったのかなと思う」と胸を張った。