映画『はたらく細胞』は武内英樹監督の集大成に 後半のシリアス展開が光る物語構成
映画『はたらく細胞』後半で発揮される武内英樹の作家性
武内英樹はコメディのイメージが強いが、『今夜、ロマンス劇場で』という、涙腺のヤバいことこの上なしな作品も撮っている。こちらは、映画監督志望の若者・牧野健司(坂口健太郎)と、モノクロ映画から飛び出したお姫様・美雪(綾瀬はるか)の、悲恋を描いたファンタジックな作品だ。筆者はボロ泣きした。本来の武内監督は、大笑いさせるも大泣きさせるも、自由自在である。 大病の原因役を演じるのは、Fukase(SEKAI NO OWARI)だ。公式の役柄が「????」となっているため、詳細には触れない。ラスボス的な役回りだが、彼の、意に反して悪にならざるを得なかった運命が、とても悲しい。白血球との関係性も、涙を誘う。 自らの体内で、佐藤健(白血球)が、永野芽郁(赤血球)が、山本耕史(キラーT細胞)が、仲里依紗(NK細胞)が、日々戦ってくれている。そんなことを想像すると、健康に気を使わざるを得ない。酒を減らそう。タバコを減らそう。油ものを控えよう。間食をやめよう。早寝早起きを心がけよう。週に2回は運動をしよう……。今作を観た人間の9割は、このように健康志向になるはずだ。自らの不摂生のせいで、彼ら彼女ら「はたらく細胞」を、無駄死にさせるわけにはいかない。
ハシマトシヒロ