企業の内部留保が過去最高の550兆円を突破…法人税が高い「昭和の経済システム」こそが最強だった!法人税を増税したほうが「賃上げに繋がる」意外なワケ
もともと、日本の労働者、及び労働組合は、欧米と違い、賃上げより雇用の確保を重視してきた。失業率は低い反面、賃金アップのための転職や、賃上げ交渉のために、ストまで行うことは稀だ。そのため、欧米と比べて賃金は上がりにくいとされる。 【マンガ】「長者番付1位」になった「会社員」の「スゴすぎる投資術」の全容 それでもバブル崩壊にもかかわらず、1990年代半ばまで右肩上がりだった実質賃金は96年をピークに、なぜ下がる一方になってしまったのか。
賃金は理由があって上がらなくなった
経済ジャーナリストが言う。 「大きなきっかけは、バブル崩壊や1990年代半ばの金融危機による不良債権処理に際し、株主構成の主役が企業間の持ち合いから外資など機関投資家に変わり、株主至上主義が色濃くなったことです。企業に配当圧力が強まり、最終利益をいかに多く出せるかに、経営の主眼が置かれるようになったのです。 これにより経費がシビアになって、仕入れコストと人件費が抑制的になり、経営が苦しくなった中小企業では、賃上げ原資の捻出すら苦労するようになりました。 そして、こうした企業側の事情に配慮してなのか、1999年の小渕政権や2004年の小泉政権下では労働者側に有利だった労働者派遣法が大幅に緩和され、企業は非正規雇用を利用しやすくなり、労働者にとっては正規雇用の就業先が減って不安定な働き方を余儀なくされることが増えたのです。 しかも企業にとって、正規雇用と同じコストを税込みで派遣や外注に置き換えれば消費税の『課税仕入れ』扱いとなり、消費税率が上がるほど、税額控除が大きくなって“手残り”が増えるという大きなメリットができてしまったのです。 さらに、1997年には独禁法改正により、いわゆる持株会社の設立が解禁されました。これにより、儲かっている企業でも、部門ごとに子会社化して賃金水準を抑制することもできるようになりました。 このように、企業にとっては、景気後退時の負担回避と好景気時の利益の最大化のため、人件費を抑える選択肢が格段に増えたのです」