小型機墜落から1か月 “ガラパゴス化”した日本の航空の課題
近距離に中小の空港が配置される欧米
欧米では、空港の数が圧倒的に違いますが、近距離に中小の空港がうまく配置されています。また、ジェネアビ機は定期旅客機の就航する空港を利用していることが多いのですが、日本の空港ではジェネアビ機用駐機場さえないところが多数です。 海外の空港では、エアライン機とジェネアビ機のエアタクシー、チャーター機などの小規模航空会社が共同して運用するさまを目にします。エアライン機で空港に着き、エアタクシーに乗り換え目的地至近の空港に着く、というのが当たり前の空の便の利用法です。エアタクシーを運航するのは、フレンドリーなキャプテンやCAというケースが多いのですが、日本では経営が成り立ちません。運航の確実性を求めるあまり、新規参入の壁を高くしていないか、という疑問もわいてきます。 日本では、飛行場としてのまとまった適地のあるのは河川敷ですが、グライダーだけに利用されています。場外離着陸場ではなく、飛行場としては神通川河川敷に建設された富山空港や、荒川河川敷を利用した本田エアポートなどがありますが例外的です。 ジェネアビの運用がうまくいっている例外的存在は、福島の農道空港(ふくしまスカイパーク)くらいです。せっかく国土交通省となったのですから、航空局と水管理・国土保全局を束ねた連携で、河川敷へのジェネアビ飛行場開設が望まれます。
“バス・パトカー・自衛隊”などが空を独占
こうして見ると、日本の航空界の現状はライセンス取得・維持、飛行場、航空会社(小規模)、飛行クラブの経営などに課題が多過ぎ、「トラックやバス(エアライン)とパトカー、救急車、消防車(公用)+自衛隊」ばかりが空を独占するという、世界的にガラパゴス化した存在といえるでしょう。 エアライン・軍用などと、ジェネアビが共にそれぞれの目的で発展していくのが日本の航空の健全な成長をもたらします。 また、万が一の災害発生時は、空からの救援が最も迅速で効果的です。こうした防災およびスカイスポーツなど航空文化の普及のためにも、小型機や、さまざまな飛行機航空機に触れ、操縦する施設としてもいろいろなタイプの空港は重要で、都市計画に新しい抜本的な航空・空港政策が必要と思います。
■藤石金彌(ふじいし・きんや) 航空ジャーナリスト。1942年、東京都生まれ。音の出る雑誌『月刊朝日ソノラマ』を経て中央労働災害防止協会。月刊『安全』『労働衛生』編集長。おもな著書:『航空実用事典』(朝日新聞社・編集総括)、『コクピットクライシス』『スカイクライシス』(主婦の友社)、『安全・快適エアラインはこれだ』(朝日新聞出版)、『航空管制「超」入門』(SBクリエイティブ)など。元交通政策審議会航空分科会委員など