上司との1on1ミーティングで言いにくい問題を提起する方法
■感情的な問題をいかに共有するか ゴードンは思い悩んでいた。 自分とチームメンバーのエレンとの間で続いている対立について、上司に伝える必要があったが、その方法がわからなかった。上司との関係は良好だが、彼女がどう反応するのか不安だ。次の1on1ミーティングでこの問題を提起すると決意したが、ミーティングの時が来てもその勇気が出ず、後日その話を持ち出すのも不自然に思えた。ゴードンは悩んでいただけでなく、情けない気持ちや不満も抱えていたため、仕事のエンゲージメントと生産性が低下してしまった。 誰もがゴードンと同じような経験をしたことがあるだろう(実際、彼は筆者らの研究対象の従業員を合わせてつくり出した人物だ)。マネジャーに困難な問題や感情的な問題を提起したいと思うことはよくある。同僚とうまくいっていないこと、健康問題や家庭での問題、バーンアウトを感じたり圧倒されたりしていること、ミスをしたこと、上司に対して重要な意見を伝えたいことかもしれない。 本稿では、それをうまく行うためのコツを解説する。筆者の一人(スティーブン)は新著Glad We Met: The Art and Science of 1:1 Meetings(未訳)のための研究で、生産的な1on1のあり方について、さまざまな組織の何千人もの従業員を調査し、インタビューを行った。そして、最も成功するミーティングでは、従業員とマネジャーの双方が従業員のニーズを明確にし、それに集中していることを発見した。 以下は、目標を設定し、それに沿った会話をするためのプロセスである。 ■ステップ1:慎重に選ぶ 全体として、「戦い」を賢く選ぶことが重要だ。まず、懸念事項の「状態」ではなく、その根底にある重要な「要因」を考慮する。上司が実際に手助けできることは何か、どのような助けが必要なのか。優先事項と議論を後回しにできる2次的な事項は何か。また、それが自然に解決する可能性があるかどうかも評価する。最後に、この情報を共有することによる潜在的なコストとメリット、意見や難しい話に対する上司の通常の対応などの要素を考慮する。 たとえば、ゴードンと同僚のエレンとの問題が、やっかいだが仕事に影響はなく、一緒に取り組んでいるプロジェクトが終了間近なら、上司に問題を提起する価値はないかもしれない。しかし、それがプロジェクトの遅れの原因になっていたり、彼女との今後の仕事を脅かしたりしているのであれば、上司は知る必要がある。 上司との関係にもよるが、問題解決に上司の助けが必要な場合や、重要なことやセンシティブなことを持ち出したい場合は、事前に伝えておくとよいだろう。そうすれば、上司を驚かせることなく、建設的なミーティングの準備をすることができる。 ■ステップ2:準備を整える 事前に話のポイントを書き出して練習し、慣れておく。上司があなたの発言をどう受け取るかも考えておく。上司はどう反応するか。何と言うだろうか。話のポイントを練習する際には、上司の反応も想定し、計画を立てる。こうした準備をすることで、明確に話すことができ、実際のミーティングでの緊張を和らげることができる。パフォーマンスを視覚化することで、不安が軽減され、話し方が改善するという研究結果もある。 ■ステップ3:うまく始める あなたの発言が好意的に受け取られるように、会話をうまく始める。気は非常に伝染しやすいため、明るく接するようにしよう。笑顔や柔らかいアイコンタクトなど、ポジティブなボディランゲージも効果的だ。 上司があなたの意見を聞こうとしてくれていることを確認し(「~についてお話してもいいですか」)、それに対して感謝の意を示す(「私の懸念を聞いてくださり、ありがとうございます。本当に助かります」)。このような感謝の表現は、話を通して敬意を示す方法の一つで、研究によれば、上司が支援の求めをどの程度受け入れてくれるかに影響すると考えられる。