「野球の神様はいる」元日本ハム・稲葉篤紀さんを導いた名将との出会い
北海道日本ハムファイターズや侍ジャパンを持ち前の打撃でけん引し、昨年現役引退した稲葉篤紀さんが9日、札幌市内の小学校で「野球人生を支えてくれた人と仕事について」をテーマに講演。大学時代のある名将との出会いのエピソードなどを例に、「野球の神様はいる」「諦めそうなときに一歩踏み出して」と子どもたちに語りかけました。
「稲葉ジャンプ」で出迎えられ
稲葉さんは愛知県出身で、1995年にヤクルトスワローズに入団しました。2005年に日本ハムに移籍して打撃の才能が開花。2012年には2000本安打を達成し、名球会入りも果たしています。2014年に引退した後は、日本ハムのスポーツ・コミュニティ・オフィサー(SCO=スポーツを通じて地域とのつながりを強化する役割)を務めています。 午前10時50分。現役時代のテーマソングであるQueenの「I was born to love you」に乗って稲葉さんが登場すると、会場となった和光小学校の5・6年生が、札幌ドームを幾度も揺るがした「稲葉ジャンプ」でお出迎え。稲葉さんは「テンションが上がりますね」と語り始めました。 ●一生懸命やることがさまざまな出会いにつながる 小学生時代は毎日家から3キロ先のバッティングセンターに行き、帰りはランニングしながら帰ってくるのが日課でした。「上手になりたい、一番になりたい」という向上心と「野球が大好き」という思いがあったから耐えられたんです。雨の日は、家の階段を50往復していたことも。この小さい頃の経験が、今にも結びついています。 ●挨拶・礼儀が人生で一番大事 新聞配達をしている方が少年野球の監督だったそうですが、野球の技術はもちろん、挨拶・礼儀が大事であることを学んだ時期でした。野球に接している時間より、挨拶・礼儀が必要な時間の方が多いので、一生で一番大事なことだと思っています。
●野球の神様は必ずいる 甲子園に行くことができなかった愛知・中京高校3年生のときはキャプテンだったので責任を感じました。「野球を辞めよう」とも思いましたが、監督から「大学野球のセレクションに行かせる」と言われ、自信があった「打つ」ことにかけ、法政大学へ進学することになりました。同時期、明治大学に野村克則選手がいて、その父親である野村克也監督(当時ヤクルトスワローズ監督)が試合を観戦。その試合で偶然にも大学通算6本のホームランのうちの2本を打ちました。それが強烈な印象になったらしく、野村監督の「法政の稲葉はいい」という一言でプロ野球に入ることができました。 ●プロ野球は「失敗の積み重ね」が成長につながる 野球は「10回のうち3回ヒットを打てば一流選手」といわれる珍しいスポーツなので、7回のアウトから何を学び、4回ヒットを打てるようになるかが重要です。後輩には「失敗して恥をかきなさい」とアドバイスしていました。それはなぜか。すぐ成功してしまった人は努力することを忘れますが、失敗や恥を重ねた人は自分の血や肉になっていきます。素振りも一緒で、毎日続けることが大事で野球の神様はこういうところを見ていると思います。 ●もうひと頑張りすればいいことがある 諦めかけそうなときに一歩踏み出してこそ努力といえると思います。「自分に勝つ」ことが大切ですね。夢に向かって努力している場面は、誰かが見ていて手助けしてくれるものです。諦めそうになった時は「ここでもうひと頑張りすればいいことがある、いい人に出会える」と思ってもらいたいと思います。