平安時代としては異例…彰子「お慕いしております!」魂の告白に至った背景とは?【光る君へ】
歌で気持ちを伝えるのが常套だった時代の、彰子の告白
しかしこの物語で若紫に自分を重ねた彰子が、それによって天皇への思慕をまひろに見透かされ、自分の殻を破って「お慕いしています!」という火の玉ストレートな告白をするとことになるとは・・・これは道長にとってもまひろにとっても『源氏物語』の思わぬ副産物だったのではないだろうか。この彰子の涙、涙の告白には、SNSで「投球モーションなしで超豪速球を投げこんだようなもの」「あんまりまっすぐでこちらがもらい泣きしそう」など、大絶賛の言葉がノンストップ状態となっていた。 ただこの時代、物語前半のまひろと道長のように、気になる男女は歌で気持ちを伝え合うのが常套だった。すでに形の上では夫婦になっている者同士なので、その辺の感覚は結婚前の男女とは違うのかもしれないけど、直接思いを伝えるというのは、今よりももっともっと大胆というか、失礼に近いギリギリの行為だったはず。ただインテリの人間ほど、自分の常識外の所から攻められたらあっさり崩れるものなので、一条天皇もそっちのタイプだったのかも・・・。
まひろはやはり「光」だった…MVPは安倍晴明では
とはいえやっぱりファインプレーだったのは、彰子が心のなかではいろんなことを考えている少女だと看破したうえで、「中宮様らしい中宮様とはどのようなお方ですか?=自分で自分の限界を決めつけてんじゃねえよ!」という最高のアドバイスを送ったまひろだろう。もし道長がまひろに、物語の執筆と後宮への出仕を勧めなかったら、『源氏物語』は生まれなかっただけでなく、彰子も本当の自分を表現できないまま、藤壺で幸薄い人生を送ることになっていたかもしれない。 そう考えると、道長に「今あなたの心のなかに浮かんでいる人こそが、あなたを照らす光」と予言した故・安倍晴明(ユースケ・サンタマリア)、結局今回の本当のMVPは彼だったかもしれない。しかしそうなると、もう一つ晴明が送った「光が強ければ闇も深くなる」という警告も、現実になるかもしれないということで・・・まずは今回のラストで、まひろと道長に不穏な視線を送っていた女房が、その導火線にならないことを願っておきたい。 ◇ 『光る君へ』はNHK総合で毎週日曜・夜8時から、NHKBSは夕方6時から、BSP4Kでは昼12時15分からスタート。9月22日放送の第36回「待ち望まれた日」では、中宮・彰子が一条天皇の子を宿したことで、まひろが道長から一つの使命を受けることと、清少納言(ファーストサマーウイカ)が道長の政敵・藤原伊周(三浦翔平)にある訴えを持ちかけるところが描かれる。 文/吉永美和子