相続税の計算は4段階!…相続専門税理士が教える、相続税のしくみと財産評価の超キホン
財産評価にまつわる基礎知識
〈相続税法における時価〉 「財産評価基本通達」に定められています。これに従い、相続、遺贈、または贈与によって取得した財産は、評価額が算出されます。 〈土地の地目〉 土地の地目は、「宅地」「田」「畑」「山林」「原野」「牧場」「池沼」「鉱泉地」「雑種地」に分けられていますが、地目によって評価方法が異なります。また、宅地の評価額は、登記簿に記載された1筆の土地ではなく、実際の利用単位である1画地ごとに評価されます。1画地というのは、利用の単位となっている1区画の宅地のことをいいます。 〈路線価方式〉 宅地が面する路線に設定された路線価に基づいて、評価額を算出する方法です。複数の路線に面する宅地の評価では、正面路線を特定する必要があります。路線価に奥行価格補正率を適用した際、最も高い評価額が示される路線が正面路線として選ばれます。 〈小規模宅地等の特例〉 被相続人などが事業や居住のために使用していた宅地で、相続人の生活基盤維持に必要不可欠な宅地に対して適用されます。一般的に、これらの宅地を処分する際には相当の制約が伴います。そこで、一定の要件を満たす場合には、評価額を50%または80%減額することが認められています。 〈借地権・貸宅地の評価〉 土地の所有者が地上権または賃借権を設定すると、借地権が発生します。これによって賃借人は土地の使用収益権を得ますが、所有者の使用は制約されます。このような宅地を貸宅地といいます。 〈自己が所有する宅地の上にある建物の賃借〉 建物が建っている宅地は、借家人の使用収益権によって、所有者の使用が一部制約されます。このような宅地を「貸家建付地」といいます。 〈賃貸不動産による評価引下げの仕組み〉 相続税評価額の低い財産に組み替えることによって、相続税負担を軽減させる方法です。相続税対策として用いられます。
贈与税にまつわる基礎知識
贈与とは、一方の当事者が財産を無償で他方に与え、相手方がそれに受け入れることです。贈与税は、個人間の無償の財産移転に対して課される税金です。 相続税は、被相続人から財産を承継するときに課される税金ですが、生前に財産を贈与することで相続財産が減少し、相続税負担が軽減される場合があります。そこで、贈与税が課されることとし、相続税が補完されているのです。 贈与税には「暦年課税」と「相続時精算課税」の2つの方法があり、いずれかを選択する必要があります。暦年課税には要件はありませんが、相続時精算課税では要件を満たすことが必要です。 贈与税は受贈者に課されるものです。暦年課税では年間の贈与財産総額から基礎控除額を差し引いたあと、累進課税の税率が適用され、税額が計算されます。直系尊属からの贈与では、税負担の軽い特例税率が適用されます。 相続時精算課税を利用した場合、110万円を超えた部分が、累計2,500万円になるまで非課税で、それを超えた部分に対して一律20%の贈与税が課されます。 この制度は早期に次世代への財産移転を促すためのもので、贈与者が死亡した際には、過去の贈与財産が相続財産に加算されるとともに、これまで支払った贈与税が相続税から控除されます。 賃貸不動産など収益物件の贈与や、価値上昇が期待される財産を相続時精算課税で贈与することは、相続税負担の軽減のために効果的です。相続時精算課税の選択後は暦年課税との併用ができなくなるため注意が必要です。 岸田 康雄 公認会計士/税理士/行政書士/宅地建物取引士/中小企業診断士/1級ファイナンシャル・プランニング技能士/国際公認投資アナリスト(日本証券アナリスト協会認定)
岸田 康雄