相続税の計算は4段階!…相続専門税理士が教える、相続税のしくみと財産評価の超キホン
相続税のしくみは複雑で、注意点も多くあります。ここでは、相続専門税理士が、相続税の概要と、ぜひとも覚えておきたいポイントを整理します。FP資格も持つ、公認会計士・税理士の岸田康雄氏が解説します。 年金に頼らず「夫婦で100歳まで生きる」ための貯蓄額
相続税の計算は「4段階」
相続税の計算は「課税価格の計算」「相続税総額の計算」「各相続人に算出された相続税額の計算」「各相続人の納付すべき相続税額」の計算の4段階があります。 【第1段階】課税価格の計算 相続財産に加え、みなし相続財産や生前贈与財産も含め、債務や葬式費用を控除し、課税価格の合計額を算出します。 【第2段階】相続税総額の計算 基礎控除後の課税遺産総額から、各相続人が法定相続分に基づいて相続したと仮定して、相続税総額を算出します。先に総額を確定させることがポイントです。 【第3段階】各相続人等に算出された相続税額の計算 相続税総額を実際に取得した財産の割合で各相続人に配分し、個々の相続税額を計算します。 【第4段階】各相続人等の納付すべき相続税額の計算 算出された税額から各種税額控除を差し引き、納付すべき額を求めます。とくに直系親族ではない人の場合、税額控除前に20%の加算があります。 ◆相続時に起こりがちな問題と課税にまつわる注意点 〈遺産が未分割の場合〉 相続税の申告期限までに遺産が未分割である場合、法定相続分に基づいた仮の申告を行います。ただし、税額軽減などの特例の適用を受けることができません。 〈控除される債務・費用は?〉 準確定申告による所得税や未払い固定資産税、葬儀費用や戒名料、お布施などがあります。 〈相続財産以外で、相続税の課税対象となるものは?〉 被相続人が保険料を支払った生命保険金や、死亡後3年以内に支給が確定した退職手当金です。 〈死亡保険金の注意点〉 相続人が受け取る場合、500万円に法定相続人数を乗じた金額までが非課税です。相続人以外の人が受け取る場合には非課税はありません。 〈退職手当金の注意点〉 死亡後3年以内に支給が確定したものは、500万円に法定相続人数を乗じた金額までが非課税となります。 〈名義財産にはとくに注意が必要〉 名義財産とは、実際は被相続人のものであるにも関わらず、家族の名義で登録されている財産です。名義を変えた銀行預金が多く見られます。国税庁の報告によると、申告漏れになる相続財産の中で、現金や預貯金が全体の約33%を占めており、税務調査でよく申告漏れが指摘される財産です。 実質的に被相続人のものである財産は、名義が誰であったとしても相続税が課されます。申告漏れが発覚した場合は、延滞税や過少申告加算税、重加算税などが課される可能性があるので注意が必要です。 ◆相続税の税額控除の種類 相続税の税額控除としては、「暦年課税の贈与税額控除」「配偶者の税額軽減」「未成年者控除」「障害者控除」「相次相続控除」「外国税額控除」「相続時精算課税の贈与税額控除」があります。 【暦年課税の贈与税額控除】 相続開始前7年以内に被相続人から受けた贈与を相続財産に加算する際、すでに支払った贈与税を相続税から控除する制度です。 【配偶者の税額軽減】 配偶者が取得した相続財産のうち、1億6,000万円または配偶者の法定相続分のいずれか大きい金額までは相続税がかからない制度です。 二次相続で、相続財産が一次相続のときと同じであれば、税負担が増えます。これは、配偶者の税額軽減が適用されず、基礎控除額が減少するためです。 一次相続での配偶者の取得割合が問題となりますが、家族構成や配偶者固有の財産などの影響を受けるため、二次相続のシミュレーションを行って慎重に検討する必要があります。