竹内まりや『プラスティック・ラブ』の魅力はトラックにあり「シティポップとして、海外の人にも通用している大きな要因の1つだったと私は思っています」
◆薬師丸ひろ子をイメージして「元気を出して」を書いた
住吉:リスナーのみなさんからは、まりやさんの楽曲のなかで歌詞に思い入れのある曲をリクエストしていただいています。そのなかで断トツに票数が多かった曲はどれだと思いますか? 竹内:リスナーの年代にもよると思うんですよね。たとえば、広い年代で考えると「人生の扉」かなと思うんですけども、どうでしょう? 住吉:それでは、たくさんいただいたメッセージのなかから1通ご紹介します。 <リスナーからのリクエストとメッセージ> ・「元気を出して」 私は中学校の教師をして13年目になります。新任から5年目までは毎日が戦いで、帰るのは日付が変わってから。土日は部活動などに追われる毎日でした。 嬉しいことも楽しいこともたくさんですが、悩み、落ち込むこともたくさんあります。教師になって2年目の頃、母に大泣きしながら「辞めたい」と言ったところ、教師歴23年の母に「人生はあなたが思うほど悪くないって!」と言われました。その言葉が私の心にささり、「これから先はきっといいこともあるよな」と前向きになれました。 でも、あとからよくよく考えたら、母の言葉は竹内まりやさんの歌詞じゃないかと思ったんです。今でも落ち込んだときは「元気を出して」を聴いています。恋愛だけでなく、仕事でも励まされた曲です!(女性・36歳) 住吉:1987年のアルバム『REQUEST』に収録されている「元気を出して」が一番票数を集めた曲でした。 竹内:今の時代、みんな疲弊しているなっていう気持ちがあるんですよね。これは失恋した女友達を励ます曲ですけど、「元気を出して」と言っている部分がみなさんに響くのかなって思います。 住吉:まりやさんが1984年に薬師丸ひろ子さんへ提供した曲なんですよね。 竹内:そうなんです。ひろ子ちゃんの柔らかい清純な声を聴いたときに、この人の声は癒されるなって思ったんですね。この声で励まされたらいいだろうなってことで(作った)。 住吉:ということは、ひろ子さんを思い浮かべて書かれた曲だったんですね! 私はこんなに素晴らしい曲を提供されたことに驚きました(笑)。すごく器の大きい方だなって思います。 竹内:ひろ子ちゃんの声を聞かなかったら、この曲は生まれていないんですよね。提供楽曲は依頼された側の人に合わせて書きますから。この曲はひろ子ちゃんありきです。なので、私がセルフカバーをするときに、ひろ子ちゃんにコーラスをお願いしました。ひろ子ちゃんの声が入ったことで「元気を出して」の完成系が見えた気がしました。 住吉:失恋した友達を励ますっていうシチュエーションもすごくナチュラルですよね。何かきっかけがあったのでしょうか? 竹内:私の好きなジェームス・テイラーとカーリー・サイモン夫妻が離婚しちゃったときに、カーリーは失恋ソングばかりを集めたアルバムを出したんですね。それを見て、カーリーを励まそうってことで、ジェームス・テイラースタイルの編曲を達郎にお願いしたんですよ。 住吉:そうなんですか! 竹内:そういうのだと私のなかでもストーリーが成り立つなって思いましたし、ひろ子ちゃんの声があったうえで、女友達を励ますっていうテーマが決まったんですよね。あと、達郎がジェームス・テイラーの音楽性をわかってくれているので、シンプルなアコースティックの編曲で仕上げてくれたことにも意義があるんですよね。 (TOKYO FM「FM FESTIVAL 2024 竹内まりや 45th Anniversary Special~まりやとわたしのPrecious Words~」2024年11月4日(月・祝)放送より)
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