習い事にレジャー…低所得家庭の子ども約3人に1人が「体験ゼロ」、年収別で2.6倍以上の差も…日本初の全国調査で判明した体験をあきらめさせる壁
体験にかかる値段
子どもたちが様々な「体験」の機会を得るためには、具体的にどの程度のお金が必要なのだろうか。低所得家庭を中心に、ときにあきらめざるを得ないこともある「体験」、その値段はそれぞれの分野ごとに、大体いくらくらいかかっているのだろうか。 保護者の回答をもとに、何らかの習い事や体験活動に参加するにあたって、過去1年間に各家庭で実際に支出された金額をまとめたのが、グラフ4だ。 まずわかるのが、概ね毎月の費用がかかる「放課後」の体験(クラブや習い事など)のほうが、1回ごとに費用がかかる「休日」の体験(キャンプなど)よりも、年間での支出額がかなり大きくなっているということだ。 前者の「放課後」の体験については、スポーツ系と文化系のどちらも、大体同じくらいの費用がかかっている。年間で平均8万円超だ。その費用の中には、毎月の月謝に加えて、スポーツ用品や楽器などの用具代、また遠征や合宿、発表会などの費用が含まれる場合も少なくないだろう。 他方、「休日」の体験については、最も高い「自然体験」でも3万円弱で、「放課後」の体験にかかる年間の費用に比べて半額以下になっている。加えて、お金のかかりやすい旅行から、動物園や水族館、コンサート、さらには地域の行事やお祭りまでが含まれる「文化的体験」が、それらを平均すると2万円を下回る水準。そして、職業体験などの「社会体験」は、1万円未満となっている。
体験の「提供者」ごとの違い
「体験」の値段を考えるうえでは、体験の「提供者」の違いに着目することも重要だ。 例えば、同じサッカークラブであっても、企業が運営するクラブに所属するのと、放課後のグラウンド等を使って保護者がボランティアで運営するクラブに所属するのとでは、保護者にかかる費用の水準が違ってくる。体験の「提供者」の違いまで見ることで、より細かなニュアンスを把握することができる。 そこで、今回の調査では、「放課後」と「休日」のそれぞれについて、子どもたちが参加している「体験」をどんな主体が提供しているのか、保護者に聞いている。 その結果について、まずは各種の習い事やクラブなどからなる「放課後」の活動から見ていこう。 調査では、(1)民間事業者、(2)地域や保護者のボランティア、(3)学校のクラブ活動、という3つの選択肢を提示した。そして、その回答をもとに、それぞれについて平均の年間支出額を示したのがグラフ5だ。体験の「提供者」ごとに金額の違いが出ているのがわかるだろう。 スポーツ系を見ると、「民間事業者」が運営する場合は平均で約9.2万円かかっているのに対し、「学校のクラブ活動」ではそのちょうど半分の約4.6万円となっている。文化系では「民間事業者」で9万円超、「地域や保護者のボランティア」で約3.5万円だ。こちらも差が大きい。 「民間事業者」で相対的に支出額が大きくなることはイメージしやすいだろう。講師や指導者の人件費、会場や設備にかかる費用が、基本的にすべてお金を払ってサービスを利用する側、つまり保護者の負担(受益者負担)になるからだ。 逆に、「ボランティア」や「学校のクラブ活動」の場合には、コーチに支払われるお金が交通費程度であったり、施設の利用にかかる費用が無料であったりすることで、保護者の経済的な負担が抑えられやすい。 ただし、地域の野球やサッカーのクラブなどをイメージすればわかる通り、保護者は単に利用者であるだけでなく、無償で様々な活動をサポートする存在として期待される側面もある。つまり、金銭的な負担の少なさと、時間的な負担の多さとがセットになっている場合があるのだ。 ひとり親家庭でかつ働いている場合などが典型的だが、こうした親にとっての時間的な負担が(お金以外の)壁となり、子どもが「体験」の場に参加することを難しくしてしまうケースもある。