バンダイが描くガシャポンの未来…〝脳波〟測定してガシャポン? 少子化、海外進出…業界の課題
野球ボールより大きなガシャポン
ふと我に返って、次に訪れたのがワク星エリア。このエリアは、ガシャポンの現在を体現できるエリアです。「ワンピース」、「ドラゴン」、「ウルトラマン」、「サンリオ」など新作を含むキャラクター商品が展示してありました。ちなみに、2023年にバンダイは1263アイテム(約1億6000個)の新商品を販売しました。この数は日本の人口よりも多い。しかもこれはバンダイだけの商品数です。他のメーカーの商品数を足すととんでもない数になります。 さて、ワク星エリアでは、ガシャポン史上最大サイズの90ミリのカプセルがありました。夏にこのカプセルに入った商品が誕生する予定です。一般的に市場に出ているカプセルは、44ミリ、6ミリ、72ミリの3種類が多いです。バンダイは、その上を行く90ミリのカプセルを開発。野球のボールが約72から74ミリだとすると、野球のボールよりも大きい。見た瞬間に「でかい…」の一言につきます。新しいカプセルができることは、商品のラインナップの幅が広がることを意味します。このカプセルを開発できるのも、バンダイは自販機というインフラがあるため、開発ができるのです。
1993年に香港にも進出
また、ワク星エリアでガシャポンの海外展開のパネルに目が留まりました。 現在、玩具業界には大きな2つの課題があります。その2つが「少子高齢化」と「海外展開」です。 それぞれに対策は打っており、「少子高齢化」対策としては、少子化が進む中、シニア層をいかに取り込めるかが重要になっているため、ガチャガチャ業界ではすでに大人向け商品が増えています。 「海外展開」では、バンダイが1993年に香港で初のガシャポンで海外進出しています。2024年3月時点で、アジアを中心に米国や欧州など12エリア34店舗まで展開。全体的に海外は好調のようで、今後も海外展開は拡大していくように思えます。
脳波からゲットできるガシャポン
最後の未来エリアでは、このイベントの目玉と言える未来のガシャポンを体験できました。 脳で回す「フィーリングガシャポン」と、地球を旅している気分が味わえる「トラベルガシャポン」です。 特に私はフィーリングガシャポンが気に入りました。このフィーリングガシャポンは、ヘッドセット(測定器)を装着した体験者の脳波を、スキャンして分析し、その感情にピッタリ合うガシャポンをゲットできる装置になっています。 脳波を測定することで、「喜び」、「緊張」、「ワクワク」など人間が持っている12種類の感情のうち、どんな気持ちを感じているかがわかるのです。 2018年頃より構想を開始し、約5年の歳月をかけて実現したそうです。開発に携わったベンダー事業部事業開発チームマネージャーの近藤創さんは「脳波で測定した人の感情をガシャポンで、どういうふうに表現をしたら面白くできるのかを考えるのが大変でしたね。ガシャポンは自販機だけにとどまらないぞという思いです」と意気込みを話してくれました。 フィーリングガシャポンを実際に体験してみた際、私の感情は「面白さ」でした。 そして、その感情にピッタリなガシャポンは「起きたら猿になっていた人」のキーホルダーでした。なんとも言えないシュールさに笑ってしまいます。この未来のガシャポンを企画できるのは、業界でトップを走り続けているバンダイだからこそ、開発可能にした装置だと強く感じました。 ガシャポンEXPOを通じて、EXPO自体が一つの自販機のように思え、各エリアは飽きさせずワクワクする展示内容で、そこには携わっている人たちの熱意と商品に対する愛情が伝わってきたEXPOでした。 ◇ この連載は、20年以上業界を取材しトレンドをチェックしているおまつさんが注目するガチャガチャを紹介していきます。 ◇ ガチャガチャ評論家・おまつ(@gashaponmani) ガチャガチャ業界や商品などをSNSで発信中。著書に「ガチャポンのアイディアノートーなんでこれつくったの?ー」(オークラ出版)。テレビやラジオなどのメディアへの出演や素材提供も多数ある。