なぜゼクシィは「厚い、重い、デカい」雑誌を続けるのか…「結婚離れ」の中でも部数好調を維持し続けるワケ
■だからあんなに重くてデカい雑誌に 誌面でも定番企画であるピンク色の婚姻届などの付録をつけたり、書店購入者には祝福メッセージを込めた専用紙袋をプレゼントしたりと、記念品感を演出。直近の市場調査でも、約3割が体験価値のみを理由にゼクシィを購入したと回答している。 「イヤホンを片耳ずつつけて音楽を聴くように、2人で肩寄せ合ってゼクシィを読む、同じ空間での共有体験に価値がある」と森統括編集長は話す。 雑誌の縮小版を出さないのも、幸せな世界観をビジュアルで訴え、読者の憧れを醸成するため。号によっては3キロを超すその重さと1000ページを軽く超すボリューム、A4という判型の大きさからネット上では「鈍器」と揶揄されることもあるゼクシィだが、理由あってのことなのだ。 結婚に対する価値観の変化に対応するため、コンテンツの見直しも戦略的に行ってきている。 2012年に「プロポーズされたら、ゼクシィ」という印象的なコピーを採用し、コンテンツも「結婚式場探しのための情報誌」から「結婚が決まったら読むバイブル」にシフト。この軌道修正によって、結婚式の実施有無にかかわらず、まずは結婚のタイミングで手にとってもらえるようになったという。 ■売り上げ部数がV字回復したワケ 「式をあげる、あげないにかかわらず、結婚が決まったら気になることは共通しているんです。今までなら『結婚式にかかるお金』だった企画は『結婚が決まったらかかるお金』に、『結婚式準備のダンドリ』も『結婚が決まったらすぐ読むダンドリ』に変更したりと、結婚式情報から結婚そのものにまつわるコンテンツへ軌道修正しました」 ただ、ここでふと疑問がわく。ここ1年に刊行されたゼクシィの第一特集を見ると「結婚のダンドリ」「手続き・届け出」……。似たような企画が並んでいるようにも見える。読者に飽きられてしまわないのだろうか。 しかし、実はここにも好調のヒントが隠されている。 ゼクシィでは、2017年ごろに、売り上げが低迷した。この立て直しを図るべく、2018年に定価を500円から全国一律300円に値下げするとともに、毎号の特集企画や表紙、付録の部数因果関係を調べ、詳細(重要業績評価指標)を設定した。 同誌では、毎号4000~6000件の読者アンケートが返ってくる。この結果や市場調査などをもとに、企画内容や表紙がどれだけ購入につながったのかをさらに詳細な分析を進めた。 この作業を過去数年にわたって行って再検証し、第一特集に配置すれば売れる企画、売れる号の表現に必要な要素などを各担当が導き出した。