青木真也が王座奪還したシンガポール格闘イベントONEの日本上陸は成功したのか
2012年にDREAMが崩壊。行き場を失った青木はすぐにシンガポールでスタートしたばかりのONEと契約した。 「僕はONEが(ここまで)大きくなる前から契約している。ドリームがなくなってチャトリ(CEO)に拾ってもらった」 昨年7月に日本大会開催が決まると、この1年間、メインイベンターとしての役割を果たすことだけを考え、その準備に時間を費やしてきた。 「この大会のイベントをまとめる責任感と忠義だけで1年間やってきた。終わった安堵感というか、ほっとしています」 それが素直な心境だ。 巨大な会見場をぎっしりと埋めた海外メディアから「あなたは格闘技を仕事だと言っているが?」と質問された青木は、「戦うのは辛いです。生きていくのも辛いし苦しい。でも少しだけ生きていると、毎日、楽しいことがある。格闘家も普通に働いている人も一緒です。月曜に(会社に)行きたくないように試合は怖くて、やりたくない」と、モチベーションにまつわる深い話をした。 チャトリCEOが、「ハッピーなイベントになった。青木はメインイベンターの責任を果たした。世界中のファンへメッセージを届けて終えることができた。格闘技だけでなく人間性が優れていることも示した」と、青木の戦いを評価すると、眼鏡姿の青木は、表情を緩めて早くも次のターゲットを口にした。 「必死にやって本当によかった。今は次の試合をしたいなと思っている。若い選手とやりたい。クリスチャン・リーとやりたい」 クリスチャン・リーとは、まだ20歳のアンジェラ・リーの弟で、昨年、2階級制覇王者、マーチン・ヌグエンに敗れたが、日本の朴光哲、横田一則、徳留一樹を撃破している期待の新鋭。青木も「予定調和のないファイター」と高く評価していた。 チャトリCEOによると、現在ONEと契約しているファイターは世界に550人いて、そのうち130が元世界王者。毎年、世界から1万人ほどの選手をリストアップして50人と契約を果たすという。チャトリCEOは、この日、リングサイドにいた那須川天心サイドからも参戦オファーがあり話し合いを続けていることを明らかにして「北米も含めた世界の格闘団体のチャンピオンを一同に集めたチャンピオンシップができればいい」との野望を語った。 「新時代への大いなる一歩が刻まれた」 急成長の団体トップは、そう大会を総括した。PRIDEが、世界の格闘界を席巻した時代があったが、今は、もう日本はアジアの片隅に追いやられているのかもしれない。 まさに格闘技ボーダーレスの新時代である。