青木真也が王座奪還したシンガポール格闘イベントONEの日本上陸は成功したのか
タイトル戦は4試合組まれ、“セミセミ”では、元DEEPメガトン王者の長谷川賢が、ミャンマーの英雄、アウンラ・ンサンのミドル級王座に挑戦。終始プレッシャーをかけられてミドルを蹴られた左の脇腹は、どす黒く内出血、強烈な右ストレートをまともにもらって崩れ落ちパウンドの嵐の前に戦意を喪失した。 セミファイナルは、美しき女子ファイターのカリスマ、アンジェラ・リー(シンガポール)が、ストロー級の王座返り咲きを狙ったが、王者、ション・ジンナン(中国)に消耗した5ラウンドにボディストレートを食らわされて、横を向いてしまった。そこから滅多打ち。試合後の会見に出られないほどのダメージを負った。 “後半の2部”は、あっという間の3時間だった。あのPRIDEの全盛期の興奮が蘇ってきたかのような熱気だった。だが、日本人男子ファイターはメインまで全敗。会場全体の無念と欲求不満が募り、大トリで挑戦者として登場した青木への期待感は最高潮に達していた。 しかも青木が日本でMMAの試合を行うのは2015年の年末に開催されたRIZINの旗揚げ戦での桜庭和志戦以来、4年ぶりである。 開始早々に満場の青木コールが起きた。 左構えの青木は、冷静に左のキックを使いながら得意のグランドに持ち込むチャンスをうかがう。両者は2016年の11月に立場が逆で対戦。青木は、膝蹴りからのパウンドでTKOに葬られ3度目の防衛戦に失敗していた。 そのフィリピンのストライカー、フォラヤンの飛び道具をいかに封じるかが、青木のテーマだった。プレッシャーをかけながらも左フックを浴びたが、青木はひるまない。共に35歳。円熟の駆け引きである。片足タックルからケージに押し込む。そこから大外刈りで投げを打ってテイクダウンを奪い上になると瞬間的に左手を頸動脈から絡めて右手でロックした。得意の肩固め。足を抜くと顔を真っ赤にしたフォラヤンは動かなくなった。 王者が落ちた。失神を確認するとレフェリーはTKOを宣言した。 青木はケージの最上部に上って歓声に応え、花道であぐらを組んでグローブを外す。再びリング上に戻ると、泣き顔になってベルトをポーンと放り投げた。 そして「貸してくれ」とマイクを持ってガラガラの枯れた声で吠えた。 「あのね。35歳になって、好きなことをやって、家庭壊して、ひとりぼっちで格闘技をやって。どうだお前ら、うらやましいだろう」 両国がどっと沸くと「おれはな、こうやって明日もな。コツコツ生きていくんだよ」と続けた。そして「みんなも一緒に楽しむぞ。おれたちはファミリーだ!」と叫んだ。 もう一度、世界中のファンへメッセージを?と問われ、スパッツに書かれた「GO」の文字を手で叩いて「けつにGOって書いてあるけどな。みんな明日もGOだ」と吠える。青木ワールド満開である。