57歳カズ、今季無得点に自嘲「あんなもん」…J3昇格へJFL鈴鹿“本気”「出せばいいではない」
プロ40年目の来季へ意欲「できる限り選手は続けたい」
もちろん、チームも変わる。来季上位進出に向けて補強も必要。外国人選手やカズは来季も残る見込みだが、他の選手も含めてチームは再構築される。「補強は必要になる。強化と相談しながら、来季上位に入れるようなチーム作りを進める」と斉藤社長は話した。 さらに、監督も変わる。7月にカズ加入とともに就任した朴康造監督はセレモニーで「私は契約満了で退団します。来季はみなさんとともにスタンドで応援します」とクラブの発表より前にサポーターに異例の挨拶。「チームを浮上させられなかったことは悔しい」と話した。 それでも、京都パープルサンガ(現・京都サンガF.C.)、ヴィッセル神戸時代チームメイトのカズとの戦いを振り返り「コミュニケーションをとりながら、起用してきた」。選手たちへの「カズ効果」について「トレーニングに取り組むカズさんの姿を見て、選手たちの意識が変わった。カズさんがいるからこそ、国立競技場やカンセキスタジアムで試合ができた。選手へもいい影響を与えた」と話した。 来季の監督については「候補を絞り込んでいる段階」と斉藤社長。チームの「顔」でJ3昇格への「切り札」にもなるカズをどう使うかがカギになるため「カズさんの価値を理解し、その価値を高めていける人に監督をやってもらう」と話した。 決してカズ個人のためだけではない。「ただ試合に出せばいいということではない。勝利のために効果的な使い方があるはず。カズさんの価値が上がれば、クラブの価値も上がる」と斉藤社長。22日には三重県庁に一見勝之知事を訪問。もちろん、カズも同席した。同日には鈴鹿市内の小学校でカズを先生にした特別授業も実施。「地域に密着できるかはクラブの力。個人の力は小さい」とカズは話したが、地域との関係を構築するためにその存在は大きい。 今季は加入から10試合連続交代出場。11試合目の先月26日のソニー仙台戦で初先発したが、その直後の練習で左足ふくらはぎを痛めて離脱した。3試合を欠場したが怪我も癒え「最後の試合に出られてよかった」と話しながらも、1-1で引き分けたことで「たくさんのサポーターに勝利を届けることができなかった」と悔しがった。ただ、その目は来季に向いている。 「情熱を持ってピッチに立てるか」とライセンス取得で昇格を争う戦いになることを願った。そして「準備が大切」と強調した。「できる限り選手は続けたい」とはいうものの、引退の時期は確実に近づく。それでも、カズは1試合1試合、準備してプレーして、を繰り返す。プロ40年目、来月予定する個人キャンプから戦いは始まる。 [著者プロフィール] 荻島弘一(おぎしま・ひろかず)/1960年生まれ。大学卒業後、日刊スポーツ新聞社に入社。スポーツ部記者として五輪競技を担当。サッカーは日本リーグ時代からJリーグ発足、日本代表などを取材する。同部デスク、出版社編集長を経て、06年から編集委員として現場に復帰。20年に同新聞社を退社。
荻島弘一/ Hirokazu Ogishima