なきそが一切の救いがない現実を描く「化けの花」 / timeleszが感謝込め3人で作り上げた「because」
YouTubeでの視聴回数チャートや、ストリーミングサービスでの再生数が伸びている楽曲を観測し、今何が注目されているのかを解説する週刊連載「再生数急上昇ソング定点観測」。今週はYouTubeで10月25日から10月31日にかけて集計されたミュージックビデオランキングの中から要注目トピックをピックアップします。 【動画】一切の救いがない現実とは…「化けの花」MVはこちら(そのほかの記事中で言及しているMVも) 文 / 真貝聡 ■ まずはこの週の初登場曲の振り返りから 今週のYouTubeのミュージックビデオランキングは、14位にMISAMOの「Identity」が登場した。MISAMOとしては初めて海外で撮影されたこのMV。総勢30名のダンサーと一緒に披露した華麗なダンスはもちろん、スペインの壮大な景色も堪能できる。11月3日にはTWICEのメンバーが集まってMVを観るリアクション動画が上がっているので、こちらも合わせてチェックいただきたい。 19位はJIN(BTS)の「I'll Be There」がランクイン。10月25日にMVが公開されてから、2週間で1600万回再生を突破した。 56位にはBE:FIRSTのSHUNTOとRYUHEIによるユニット曲「Metamorphose」のダンスプラクティスビデオが登場した。彼らは9月に開催されたライブイベント「BMSG FES'24」で同曲を初披露しており、YouTubeのコメント欄では「フェスで初めて観て衝撃を受けました」といった、この日のステージを観たことをきっかけに2人の表現力の虜になった人々の声が多く上がっている。 62位にランクインしたのはNovelbrightの「アイビー」。大倉士門と池田美優(みちょぱ)の結婚式に寄せたウエディングバラードで、ボーカルの竹中雄大はこの曲のリリースに寄せて「上京して初めてできた先輩であり親友の士門くん いつか結婚式したら雄大が歌ってなと言ってくれていてその約束が先日実現しました」「かなり思い入れのある曲に仕上がりました。僕自身もトップクラスに好きなバラードです」とバンドのオフィシャルサイトでコメント。楽曲だけでなく、実際の結婚式の様子を撮影したMVからも2人の幸せな雰囲気が伝わってくる。 人気ダンスグループの新曲が並んだ今週は、下記の3曲をピックアップした。 ■ なきそ「化けの花」 ※YouTubeウィークリー楽曲ランキング初登場42位 なきそは2022年に公開した「ド屑」のMVがYouTubeで1700万再生を超えているボカロP。その新曲「化けの花」は、リズムゲーム「プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク」に登場するユニット「25時、ナイトコードで。」のために書き下ろされた楽曲だ。今回ランクインした初音ミクバージョンは、10月20日にMVが公開されてから2週間で200万再生を突破。また、25時、ナイトコードで。とKAITOが歌う、ゲーム内でプレイ可能なバージョンは400万再生を超えている。 同曲について、9月27日にプロセカのオフィシャルアカウントがX(Twitter)で「どうしようもない現実ってあると思います。覚悟の準備をしておいてください」というなきそのコメントを公開。10月19日には、なきそが自身のアカウントで「化けの花のテーマの1つは一切の救いがない現実です。好きな歌詞は『どんなに醜く映る化粧』です」とポストした。“一切の救いがない現実”という言葉通りの、「なにも言えない かき消せない / どんなに醜く映る化粧」といった触れたら壊れてしまいそうな少女の繊細さを描いた歌詞に、不穏なムードが漂うサウンドが重なり、曲が進んでいくほど悲哀に満ちた世界観に引き込まれる。 ■ さくらみこ「flower rhapsody」 ※YouTubeウィークリー楽曲ランキング初登場53位 9月にリリースされた、さくらみこの1stフルアルバムの表題曲「flower rhapsody」のMVが53位にランクインした。作詞作曲は堀江晶太、編曲は神田ジョンと、この曲の制作陣はいずれもPENGUIN RESEARCHのメンバー。堀江と神田は同曲に込めた思いを次のようにコメントしている。 「打ち合わせの際、私が最後に『過去の自分に何かを伝えるなら?』と質問したとき、あなたは『大丈夫だよ』と一言だけ答えました。数えきれない程の想いを込めたであろうその短い言葉から全てが芽吹き、花ひらき、過去未来のあらゆる場所にそっとたどり着くような、そんな祈りを『flower rhapsody』に込めました」(堀江) 「堀江からデモを頂いた段階でさくらみこさん自身の人生を投影したかのような楽曲に仕上がっていてめちゃくちゃ気合いが入ったのを覚えています。一聴してポジティブな印象のあるみこさんの歌声の中に感じるこれまでの道のりや苦悩も相まって感動的な楽曲になっています」(神田) おそらく堀江が質問した「過去の自分に何かを伝えるなら?」という問いへの回答が「夢って なんだろう / 上手く言えない わたしへ / 歌っていいんだよ / 眩しい光の中で」「孤独は 消えないよ / 肩を 寄せ合うんだよ / さみしいよ 愛おしいよ / 大丈夫」「それが わたしのストーリー」などの歌詞で表現されているのではないか。さくらみこの人生が集約されているような言葉に感動を誘われる。10月26日、東京・有明アリーナで開催された1stライブ「flower fantasista!」の本編ラストにこの曲を披露したのも、それだけ彼女にとって節目となっている楽曲だからだろう。 MVの監督・絵コンテ・演出を担当した榎戸駿は、10月26日にXで「さくらみこさんのこれまでとこれからの道のりに、美しい彩りがたくさんありますように」とポスト。楽曲同様に、彼女の歩んできた道程を表現した素晴らしいアニメーションにも注目してほしい。 ■ timelesz「because」 ※YouTubeウィークリー楽曲ランキング初登場57位 Netflixで配信中の新メンバーオーディション「timelesz project -AUDITION-」が大きな話題を呼んでいるtimelesz が、11月20日にリリースするシングル「because」のMVを公開した。同曲は、菊池風磨が主演を務めるテレビ朝日系オシドラサタデー「私たちが恋する理由」の主題歌。新たな恋の一歩を踏み出すことに臆病なドラマの登場人物たちの心情に寄り添った楽曲であり、timeleszのファンに対して感謝を表したラブソングにもなっている。 今回の制作を前に、メンバーは全員でアイデアを出し合ったという。そして3人で話し合った内容を受けて、菊池が歌詞、松島聡が振付を考案し、佐藤勝利がMV制作に関わった。MVは彼らの作品としては珍しく、公園や街中など3人の日常を切り取ったような映像になっており、2分9秒のシーンではメンバーの仲睦まじい姿が収められている。今作が3人体制最初で最後のシングルということもあって、3人やファンにとってもメモリアルな作品となった。 リリース後、新メンバーを迎える新生timeleszがどのような活躍を見せてくれるのか、生まれ変わるグループの今後にも期待したい。 ■ 真貝聡 ライター / インタビュアー。雑誌やWebで執筆するほか、MOROHA「其ノ灯、暮ラシ」、BiSH「SHAPE OF LOVE」、PEDRO「SKYFISH GIRL-THE MOVIE-」といったドキュメンタリー映像作品や、テレビ特番「Mrs. GREEN APPLE ~Review of エデンの園~」にインタビュアーとして参加している。