除草剤で街路樹が枯れる? ビッグモーター騒動、農薬メーカーの見解は
通常の散布では「考えにくい」
中古車販売大手ビッグモーター(BM)の複数の店舗前で街路樹が枯れ、土壌から除草剤成分が検出された。BMが除草剤を散布したためとみられる。だが、除草剤は果樹園の下草を枯らすのにも使われる。散布しただけで、木が枯れるのだろうか。本紙「農家の特報班」には、除草剤の安全性に関する質問も寄せられた。農薬メーカーに見解を聞いた。 「通常の散布で、1メートル以上の木が枯れるとは考えにくい」 除草剤「ラウンドアップマックスロード」を製造する日産化学の担当者は、こう断言する。BMがどの薬剤を使ったかは不明だが、土壌からはグリホサートなどの成分が検出された。そこでグリホサート系の代表的な除草剤を販売する日産化学に取材を申し込んだ。 グリホサート系の除草剤は、かんきつなど幅広い果樹類の園地に生える雑草の茎や葉に直接散布して使える。同社によると、薬剤が土壌に落ちた場合は、すぐに土の粒子と結び付くため、植物には効果を及ぼさなくなる。誤って木に薬剤がかかっても、その部分の葉が落ちる程度の反応しか起きないという。 このため、本来は樹木に影響なく散布できる。同社にもBMの問題を受けて問い合わせが相次ぎ、「枯らしたくない大きな樹木周辺でも安心して使える」とする文書をホームページに掲載した。 ただ、これらは、使用基準に従って適正に使った場合の話だ。
高濃度で注入した可能性も
グリホサートは時間とともに成分が分解されるが、埼玉県所沢市のBM店舗近くでは、県の検査で土壌1キロ当たり最高49ミリグラムを検出。散布からどれだけ経過していたかは不明だが、日産化学によると、適正濃度で散布した直後の土壌から検出される濃度と同等か、やや高い水準だという。担当者は「正しく使ったとは思えない」と指摘する。 同社は、①定められた希釈倍率より高濃度で散布した②定められた回数以上に散布し、土壌に成分が蓄積した──可能性があるとみる。想定外の使い方で、木にどんな影響があるかは同社でも分からないという。 農水省によると、街路樹や花壇の花などに農薬を使う場合も、人が栽培・管理しているため、農薬取締法の対象になる。使用基準に反した散布は、同法違反の可能性がある。 除草剤には、高濃度で木に注入して枯らす使用方法もある。他のBM店舗前の街路樹があった場所の調査では、土壌からは除草剤の成分が出ず、枯れた街路樹の切り株や根から除草剤を検出した例もあった。日産化学は「BMがこうした手段をとった可能性もある」とみる。