【視点】少数与党 多難な船出
石破茂首相が特別国会で再び首相に指名され、第2次内閣を発足させた。だが少数与党の厳しい船出だ。内政、外交ともに多難な時代だからこそ、雌伏の時代を経てようやく政権を獲得した首相の手腕が問われる。 衆院選での与党大敗は、物価高騰などで国民生活が苦しさを増す状況に、自民党の「裏金」問題が追い打ちを掛けた結果だった。 与党が政権運営に協力を求めた国民民主党は、年収103万円を超えると所得税が発生し、手取りが減少する可能性がある「103万円の壁」見直しを要求している。 「働き控え」を誘発するような税制は国の活力も削いでしまう。国民民主党の玉城雄一郎代表には不倫が発覚したが、党は代表の続投を認めた。代表個人の問題はあったとしても、同党の政策は国民の支持を得ているとの判断だ。国民の所得が増え、豊かさを実感できる経済の実現に向け、与野党の建設的な議論が望まれる。 衆院選で示された国民の政治不信を受け、政治改革も喫緊の課題だ。政治資金規正法の再改正、政策活動費の廃止、調査研究広報滞在費(旧文書通信交通滞在費)の使途公開などが視野に入っている。 国会議員たちは、党や議員が不祥事を起こせば次の選挙で有権者の手痛い審判が待っていることを衆院選で思い知ったはずだ。政治資金の流れは透明性の確保を至上命題としなくてはならない。 石破首相は米国のトランプ次期大統領と約5分間、電話で会談し、できるだけ早期に面会することを確認した。 実業家出身のトランプ氏は通常の政治家と比べ、首相同士の個人的な信頼関係を重視すると言われる。安倍晋三元首相と親密な関係を築いたのは有名だが、石破首相がどこまでトランプ氏と渡り合えるのか、大きな関心事となっている。 アジアの超大国に成長した中国との関係は難問山積だ。台湾海峡の平和を維持することが当面の課題だが、ここでもやはり米国との連携が欠かせない。 対中関係が停滞している最大の原因は、中国が実力行使で日本の領土を奪おうとしている尖閣諸島問題にある。歴代政権で尖閣問題に関する実質的な進展は見られないが、日本側が毅然とした外交姿勢で中国の不当な要求に歯止めを掛けなければ、今後とも関係改善は望めない。 沖縄の米軍基地問題は普天間飛行場の辺野古移設をはじめとして、現在合意されている基地負担軽減策を進め、一歩でも二歩でも目に見える成果を示すことが必要だ。 ただ少数与党の政権運営では、首相が優先事項と位置づける政策以外はなかなか前進しないかも知れない。首相が意欲を示す日米地位協定改定など、重要な取り組みが後回しにならないか、沖縄県民も注視する必要がある。