「性加害報道」の伊東選手、佐野選手らアスリートが“現場復帰”も残る疑問… 3人「全員不起訴」の妥当性とは
強制・不同意性交ゆえの特殊性はあるのか
そうなると気になるのは、強制・不同意性交に関連する犯罪の特殊性だ。多くのケースで被害者側の証言が発覚の発端となっており、とくに著名人が絡む場合は報道が先行しがちで、スキャンダラスな側面がクローズアップされる。 荒木弁護士は被害者の証言について次のように解説する。 「性犯罪では多くの場合、密室での出来事であるため、客観的な証拠が少ないケースが多いです。そのため、強制・不同意であったかどうかについては、基本的には被害を訴えている女性の供述をベースに考えられることになります その結果、もちろん嫌疑不十分のケースもあると思いますが、一般的には、被害を訴えている方と示談が成立したことによって起訴猶予となり、不起訴処分になっているケースが多いと思います」 著名で、金銭的余裕もある男性プロアスリートと、性的被害を受けた可能性のある女性。この構図の時点で、アスリート側は事件を表に出されたくない心理が働くだろう。週刊誌にとっては、女性側からタレコミがあれば、すぐにでも報道したくなる事件だ。 「被害女性が告白!○○選手に性加害疑惑」「○○選手が性加害問題で書類送検」などと報じられると、事情を知らない読者は、○○選手がまるで犯罪を行ったかのように受けとっても不思議はない。 多くの場合、著名人の事件は報道先行となる影響もあり、疑惑がまとわりつくことになる。加えて、性加害報道は、不確実な情報でも外部に漏れ“クロ”とみられやすくなっていると考えられる。
「無罪推定の原則」と問われるマスコミの報道姿勢
荒木弁護士が解説する。 「刑事事件では、裁判で有罪判決が確定するまでは、被疑者や被告人について罪を犯していない人として扱わなければならない“”無罪推定の原則”があります。逮捕や書類送検によって、あたかも有罪であるかのような心象を抱かせる報道は、よくないと考えられます」 伊東選手のケースでは、自身は終始一貫して事実無根を主張していた。にもかかわらず、国内ではサッカー日本代表から外され、書類送検について大きく報じるメディアもあった。裁判で有罪判決が確定したわけではない以上、本来であれば、無罪を前提として報道するべきであったといえる。 では不起訴処分となったことが判明した時点で、報道機関はどのようにして事件を報道すべきであろうか。 「逮捕や告訴状受理といった事実が報道され、国民が関心を持っている以上、不起訴処分となった事実についても報道されるべきです。 しかし、実際には強制・不同意での性行為がであった場合には、被害者の方の方がいる以上、被害者のプライバシーに配慮する必要があります。事件の詳細が世間に広まらないようにするためにも、過剰に報道することは避けるべきだと思います」
弁護士JP編集部