処方箋なしで薬が買える「零売」は悪なのか 国は規制強化へ 医療費削減との“矛盾”指摘の声も【R調査班】
利用者からは「助かる」の声
まゆみ薬局では年会費が500円かかりますが、オープンから1週間で約400人が会員登録しています。 利用客 「病院って診察して待つじゃないですか。バタバタ忙しいので、来てすぐもらえるのは助かっています」 利用客 「薬剤師から説明を受けられる、受けた上で自分が納得して買える。安心という面で差はないです」
保険適用外だが実質的に安く買える
零売には、保険が適用されないため薬代は全額自己負担になりますが、医療機関に行くよりも実質的に安くなり、購入までの時間も短縮できるといいます。まゆみ薬局によりますと、例えば、ロキソニンを30錠購入する場合、零売薬局では1錠50円で1500円。医療機関では、1錠10.1円と安くなりますが、初診料や調剤料など合わせると3割負担の保険診療で1776円かかります。
利用者からのニーズ受け零売薬局が増加
福岡県を中心に全国43店舗を展開する「きらり薬局」も2019年から零売を始めました。新型コロナの感染拡大で、通院による感染リスクを避けたいという患者のニーズから零売を行う薬局は増えています。
医師会などから「規制強化」求める声
一方、一部の零売薬局が「処方箋なしで薬が買える」「病院に行かなくても薬が買える」などメリットのみを強調する広告を出しているのは不適切などとして、医師会などから零売についての規制を強化すべきという意見が出ています。 福岡県医師会 岩田定幸常任理事 「今までグレーゾーンで許されて来た訳ですよね。薬剤は元々副作用等がございますので、症状をきちんと診察で診て、処方を医師が行うのが当然のことかなと思います」 福岡県医師会の岩田定幸常任理事は、零売について「グレーゾーン」だという認識を示しました。
零売のメリットを指摘する専門家も
しかし、零売については、現在、規制するための法的根拠がありません。厚生労働省は、「通知だけで適正な販売を指導するには限界がある」として、零売を規制するための法改正に向けた検討を進めています。 一方、医薬品の販売制度に関する検討会で参考人を務める東京薬科大学薬学部の益山光一教授は、零売にも患者にとってメリットがある、と話し、こう提言します。 東京薬科大学薬学部 益山光一教授 「零売があったほうがいいか、ないほうがいいかという、ゼロか百かの議論ではなくて。年に1回か半年に1回とかの頻度で病院を受診するなど、「経過を診てもらいながらどのように病院と薬局で情報共有するのか等、医療関係者のニーズも踏まえながら、零売薬局の良い面をしっかりと進めていければと思います」
国は規制強化へ 法改正めざす
グレーゾーンとして医師会から批判の声があがる一方で、利用者からの一定のニーズがある零売。厚生労働省は、今後、厚生科学審議会での議論を経て規制強化のための法改正を目指しています。こうした動きを、販売する薬局はどう受け止めているのでしょうか。 まゆみ薬局取締役・小斉平義彦さん 「零売を規制しようという動きがあるのは重々承知しています。社会保障費の増大などがこれからさらに深刻化していくであろう中で、しっかりとルールを守った上で薬を提供していければいいなと思っています」