もうすぐ千円札の顔を交代する野口英世は何をした人? 実は黄熱ではなく梅毒での功績が評価される研究者、今も引き継がれるガーナとの縁
例えば愛媛大学は、世界で年間数十万人が死亡する深刻な感染症として知られるマラリアの研究を進める。何度も感染して抗体を持っている人が無症状でマラリアを広めるケースも多い。研究にも関わる東京医科歯科大の長岡ひかるプロジェクト講師は「熱が出た場合に『マラリアだ』というと仕事を休めるので、自称マラリアの患者も多いんです」と話す。抵抗力が弱い人や妊婦の感染はリスクが高く、研究で根絶を目指す。 また、東京医科歯科大の林隆也プロジェクト講師は蚊が媒介するデング熱がどれほど広がっているかを研究している。住民の採血をして抗体を持っている人の割合を調べる。デング熱は熱帯地域で流行し、発熱が主な症状。「ガーナでは確定診断がされないことがほとんどです」と話す。デング熱の流行の実態が過小評価されていて、マラリアと考えられている患者の中にも本当はデング熱だったという患者もいるとみている。 東京医科歯科大のガーナ拠点長の鈴木敏彦教授は「アフリカに研究拠点があることは感染症の治療や予防に役立っていて意義があります。感染症を通じた国際交流も深まっています」と話している。
▽コロナ対策で存在感 新型コロナウイルス流行後は、ガーナ国内のPCR検査陽性例のおよそ7割がこの研究所で見つかるなど、コロナ対策に貢献した。日本大使館のある通りは「ドクターノグチヒデヨストリート」と名付けられている。森田さんは「野口英世の作った縁がアフリカの感染症対策に役立っています」と話す。 チョコレートで有名ではあるが、日本では有名なガイドブックも出版されていないほど情報の少ないガーナで、野口英世の築いた縁が感染症対策に志を持った日本の研究者の〝拠点〟になっていた。