柳楽優弥主演TBSオリジナルドラマ『ライオンの隠れ家』/『おっさんずラブ』徳尾浩司と「映画脚本界の芥川賞」城戸賞入賞・一戸慶乃がバトンをつなぐ脚本づくりの裏側
Q3まさにリレーでバトンを交わすように進めたのですね。その中で一戸さんがご自身の色が出ているなと思う部分をぜひ教えてください。
ネタバレにならないようにお伝えするのが難しいのですが…。笑 例えば主人公たちの気持ちが動くきっかけを、こういう情景で表したらいいんじゃないかと提案させていただきました。タイトルの『ライオンの隠れ家』や第一話を見ていただけると分かるのですが、動物が絡んでいるお話なので、動物を連想する要素が主人公の心情と絡む要素であったりします。 私が参加している意味としては、新しい視点で意見を出すということなのかなと思います。なので、図々しくてごめんなさいって毎回言うのですが、遠慮なくやらせてもらっている感じです。笑
Q4今作の舞台である主人公たちが住む町はどこか特定の場所をイメージして書いたのですか?
今回そういった場所はないんです。キャラクター同士の関係性や心情を際立たせるために、海辺の町という舞台がぴったりだったという感じでした。 柳楽優弥さん演じる主人公の小森洸人(こもりひろと)は市役所勤務で、淡々と生活をしている青年で、むしろ誰にでも馴染みのあるような風景が大事なのかなと。 途中でロケ地が決まってからはロケ場所の写真などを参考にしながら企画を膨らませました。 ―一方で“ある事件”が起きるのは「山梨」と名指しですが…? 事件が起きるのはたしかに山梨なのですが絶対にここじゃないと駄目っていうことではなくて、どちらかというと距離感を意識しているというのが大きいかなと。海のある町と海のない山梨。海辺の町に住んでいる小森家と、また別の事件が起きる場所があって、主人公たちがだんだんそこに食い込んでいくみたいな感じです。
Q5ところで一戸さんはどういった経緯で脚本家になったのですか?
幼い頃からテレビっ子で、漠然とこの世界に憧れがありました。10代になってから、俳優を目指してみたいなと思い専門学校に通ったのですが、メンタル的にもフィジカル的にも自分には向かないと感じました。 そこから何年か迷いの時期があって、はたから見れば結構フラフラしている感じだったと思うのですが、いろんな寄り道をして。 26歳のときに、吉本の番組制作や構成作家などを目指す人たちが行く学校に入りました。そこで起承転結で物語を考えてみましょうという脚本の授業が一コマだけあって、それが自分の中で楽しすぎて、そこからですね。 独学で勉強したり、コンクールにとりあえず応募してみようという感じでやっていました。もちろん受賞したいという気持ちでやっていたのですが、本当に右も左もわからなかったので、とにかくやってみようと。城戸賞を受賞したときはびっくりの方が強かったです。 俳優を目指していたときに、こう“なりたい”みたいなものが強くて実際にやってみて理想と現実のギャップがあったので、何かに“なりたい”っていうよりは、やっていて楽しい方を優先すべきだと学びました。なので、有名な脚本家に“なりたい”ということではなく、ただ自分が楽しく生きるために脚本を書いていければという感じです。