ボクシングのタイトル戦で第2のタイソン事件?肩を噛まれた!
悪夢の噛み付き行為がクローズアップされた拳四朗は、父が元日本ミドル、元東洋太平洋ライトヘビー王者の寺地永さん(51)で、05年にオープンしたジムの会長という親子鷹。「強い男になって欲しい」と、漫画「北斗の拳」の主人公「ケンシロウ」の名前を借りて、寺地拳四朗と命名。プロに転向すると、リングネームを「拳四朗(けん・しろう)」とした。 関西大時代にはアマの国体王者を奪い、昨年8月に父のジムからプロデビュー。父の遺伝子を受け継いだスピードを武器に5戦5勝で、ユース世界王者のベルトを腰に巻いたが、2回に右のカウンターを食らいダウンするなど、危ない場面もあった。そのインターバルで「左のジャブでいけ! 冷静になれば大丈夫だ!」とトレーナーでもある父がアドバイスを送り、左ジャブを軸にポイントを取り返した。 「勝ちに徹した。見ている人には楽しんでもらえなかったと思うので、今日は50点。もっと右が欲しかった。このベルトは通過点。レベルアップして日本タイトルを狙う」 拳四朗は、持ち前のベビーフェイスでニッコリ。 タイトルを手にしたばかりだが、実は、12月27日に京都の大山崎体育館で、同級日本王者の堀川謙一(35歳、SFマキ)へ挑戦することが決まっている。 リング上で、「次はユースの文字をとった世界です」と語った拳四朗は、控え室に帰ると、「ちょっと調子に乗って言ってしまいました」と、前言を修正して、「もっと足を使い、スピードを活かせば勝てる。(日本王者になる)自信がある」と、対堀川との日本タイトル戦に向けて勝利宣言をした。 父も「親子タイトルを喜ぶのは拳四朗が世界をとったとき。スタミナに問題はない。さらにスピードを磨けば、まず日本タイトルは確実に取れると思う」と、6戦目での日本王座奪取を保証した。 「本当は日本を取って来年に世界と言いたいところだが、今日の試合内容だと、計画は延期だなあ。記録には、こだわらず、力をつけさせていきたい」 父の見立ては正解だろう。左ジャブのスピードとカウンターのタイミング、ディフェンスのバックステップに非凡なスタイリッシュさは見せたが、ジャブから次につなげるコンビネーションや、前に出て外すようなディフェンス技術は、まだまだ未熟。 父の寺地永は、重量級のハンディもあって世界には手が届かなかった。 ――自分の果たせなかった夢を息子に託したいのか? そう聞くと、ストレートな答えが返ってきた。 「もちろん。拳四朗に夢を果たして欲しいし、やれると思う。プロボクサーは、若いうちにしか勝負のできない職業。あの社会性のある性格だからボクシングを辞めたってなんでもできる。今は、俺もこいつにかかりきりで必死」 引退後、城陽市市議会議員も二期全うした父は現役時代とそう変わらぬ風貌で夢を語った。 (文責・本郷陽一/論スポ、スポーツタイムズ通信社)