憲法の“両性”は同性カップル含む?ゲイ公表の弁護士が「画期的」と評す東京高裁「違憲判決」【同性婚】
■同性カップルだけ婚姻制度を利用できないのは「差別」と言わざるを得ない
庭野:東京高裁は、「“性的指向”という本人の意思で選択や変更ができない属性により、重要な法的利益を受けることに区別が生じている状態を維持することに、合理的根拠はない」ということで、同性婚を認めないといった現在の民法の規定などについて憲法違反と判断。その一方で、国への損害賠償についての訴えは退けました。南さんは、率直にどう思いますか? 南: 東京高裁の判決は、「法律で婚姻制度を作っている趣旨は何だろう?」というところに立ち返っています。元々、「この人と一緒に過ごしたい」とか、「家族になろう」と言って暮らしていくのは、法律があろうがなかろうが、自然な人の営みだと思います。それが、現代の社会では法制度になって、婚姻届を出すと国によって一定の保護がされるわけです。 庭野:税金の控除があるとか、いろいろな制度が利用できますよね。 南:経済的にも社会的にも守られるし、副次的な効果として、生活の中で「婚姻した夫婦、家族である」として尊重されるという社会的な意味で結婚する人が多いです。やっぱり人と人、私と伴侶の関係が法律で守られるというところに婚姻制度の主眼があるというのが社会の実情だと思います。 今回の東京高等裁判所の理屈がしっかりしている点は、婚姻制度は現代においてどういう位置付けであるかということを明確にした上で、同性カップルだけ婚姻制度を利用できないのは「差別」と言わざるを得ないという判断をしているということ。本当に画期的だし、論理的な明快さもあると思います。
■“両性の合意”憲法に記載の言葉で揺らぐ同性婚の実現 東京高裁でも議論に
庭野:東京高裁の判決をめぐっての議論でなにか気になることはありますか? 南:憲法24条1項というところで、婚姻制度のことを書いているのですが、“両性の合意のみによって”という言葉を使っているということが議論になることがこれまでありました。 ◇憲法24条1項 ◇ 婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない。 南:ここでいう両性というのは、男性と女性という言葉を合わせて言っています。憲法24条1項が婚姻について“両性の”という言葉を使っているから、「異性婚しか憲法が認めておらず、同性婚を認めるということは憲法違反の法律を作るのと同じだ」というようなことを言い出す人までいました。 戦後、憲法を作るなかで、なぜ24条に婚姻のことを入れたかというと、それまで日本の婚姻制度はいわゆる家長のような人の了解がないと婚姻できないことがあり、男女の不平等を当たり前とする婚姻制度でした。 庭野:“嫁に入った”とか、“婿に入った”とか。 南:まさにそういう発想だったので、そうではなく、婚姻というのはあくまでも個人同士の結び付きでできるものだということから、男女の平等、また婚姻した当事者間の平等と、2人の意思を尊重しようという意味で“両性の”という言葉を使ったのです。決して男性同士、女性同士が婚姻することを排除するような意味で“両性”と言っているわけじゃないということを、(東京高裁の判決は)改めて明確にしました。 また、その前に出た3月の札幌高裁の判決だと、むしろ「憲法24条1項にいう“婚姻”には、今や同性婚も含まれる」と言うぐらい、「憲法24条1項があるから同性婚はできないんだ」という議論については、改めてしっかり「違う」と言いました。