「赤旗は人々に開かれた存在であれ」 五野井郁夫・高千穂大教授が求める「懐の深さ」
自民党の「裏金」と「2千万円支給」問題をスクープした共産党の機関紙「赤旗」。その強みと課題は何か。高千穂大学の五野井郁夫教授に聞いた。AERA 2024年12月2日号より。 【写真】「日刊紙の編集責任を負う 赤旗編集局次長の藤田健さん」はこちら * * * スクープと言えば、近年は週刊文春の「文春砲」です。しかし、文春砲がここまで政権を追い詰めることはありませんでした。今回、「裏金問題」と「2千万円問題」という二つの赤旗の「赤旗砲」によって自公を過半数割れに追い込んだのは、赤旗が文春以上にジャーナリズムとして機能したからだということは、誰も否定できないと思います。 スクープを放てたのは、赤旗記者の粘り強い丹念な調査。加えて、共産党の機関紙である赤旗は、一般紙の記者が入手できない情報を党の国会議員などを通して得ることができるのも手伝っているかもしれません。 一方で、一般紙は、朝日新聞と産経新聞の記者が元東京高検検事長と賭けマージャンをするほどズブズブの関係になり権力の一部のようになっていたこともありました。記者クラブ制度によって、当局から情報を得る代わりに政治的妥協をすることも大いにあり得ます。さらに、一般紙の記者は野党担当になれば野党に思い入れを持つのと同じように、与党担当になると与党に思い入れを持ちます。「社会の木鐸」たるジャーナリストが、政権側に共感を寄せるのはおかしなこと。 その点、記者クラブに加盟せず、共産党の一機関である赤旗には自民党と馴れ合いが生じる余地は一切ありません。政府と全面的な対決姿勢を打ち出せるのは、赤旗の強さです。 ただ、自らの組織である共産党に対してはどうかと言えば、疑問に感じる点もあります。 例えば昨年、共産党は党首公選制を著書で主張した党員を除名しました。赤旗は「規約と綱領からの逸脱は明らか」と題した論評を掲載しましたが、説明が足りていたかと言えばそうは思えません。党の中では一貫性のある主張なのでしょうが、赤旗読者には党員以外もいます。そうした人たちにもわかるよう説明する必要があります。 また、共産党指導部のパワハラ的体質などを問題視した大学教授に対し、赤旗は反論記事を載せました。私は、その教授の考えも赤旗で掲載し対話してはどうかと赤旗の記者らに提案しましたが、まだ実現していません。 赤旗も「新聞」としての機能を持つ以上、人々に開かれた存在でなければいけないはず。しかも今回の赤旗砲によって、赤旗はパブリックメディアであることが広く知られました。異論は認めないのではなく、認めた上で再反論する。そのぐらいの「懐の深さ」を見せられれば党のイメージも改善することでしょう。 (編集部・野村昌二) ※AERA 2024年12月2日号
野村昌二