“政治が変わる”県内最年少の首長が誕生…小さな町の町長選挙が残したもの【松前町長選挙】
「今、ここから見える皆さんの顔はみんな知ってる顔、ずっと私を応援してくれた人たちの顔」 11月26日夜、大歓声に包まれながら壇上で感謝の言葉を語ったのは、元松前町職員の田中浩介さん(40) 直前に、自らが立候補した松前町長選挙の開票結果を陣営関係者から知らされました。 1万1304票と3573票。 2期町長を務めた現職であり“元上司”の岡本靖さん(70)を田中さんが大差で破ったのです。 「きょういただいた票は期待値の表れだと思っていますので、この期待に必ず応えなければならない。みなさんの課題が希望に変わる新しい町を皆さんとつくっていく」 田中さんの年齢は40歳。県内20市町の市長・町長の中では最年少となります。 選挙前の下馬評では“激戦”と伝えられた松前町長選挙。 今回の結果は、人口3万人あまりの小さな町のトップを決める選挙、というだけの話にとどまらないのではないでしょうか。 “40歳の元町職員の新人”が、“70歳の現職の町長”を破った選挙が残したものとは。 (解説委員 植田竜一)
「町議選、頑張ってね」
今年7月、愛媛県庁で記者会見を開いた田中さん。 「これまでとは違うアプローチで松前町を発展させたい」として町職員を辞し、11月に行われる松前町長選挙への立候補を表明しました。 記者会見以降、定期的に国道沿いでの“辻立ち”を実施。 「初めは町民の誰も目も合わせてくれなかった」(田中さん)辻立ちも、回数を重ねるごとに手を振り返してくれたり、握手してくれたりと手ごたえを感じるように。 しかし8月、挨拶回りで出会った町民からの言葉にショックを受けます。 「あら?田中さん、もう選挙は終わったのに何でまだ辻立ちしよるん?」 「田中さん、あんた知っとるよ。頑張ったね。町議選に出た人やろ?」 ちょうど今年の夏に行われた松前町議会議員選挙と混同する町民が“多発” 「やっと名前を覚えてもらったと思ったら、町議選と町長選の区別がつかない方も多くいて…。やっぱり知名度が低い新人で、しかも、地盤も看板もカバンもない人にとっては選挙って大きな壁なんだなと痛感しました」(田中さん) 相手は、松前町のブランディングを着実に進めてきた実績を持つ現職の岡本さん。 「このままでは勝てない」 田中さんは危機感を抱きはじめていました。