<女子バレー>躍進の19歳セッター宮下遥。初のVリーグ制覇へ、夢に挑むとき
監督やチームメイトも変化を感じていた。 「センター、ライトを使うトスワークに対しては、やれと言われて、せなあかんとやっていた感じだったが、今季は自信を持って上げている。データには出ないところの瞬時の判断力が彼女の魅力。ラリー中、勝負どころでのひらめき、相手センターが(ブロックに)ついてこられないようなトスを出す。思い切ったことに対しては僕は怒らない。まじめで丁寧すぎるトスワークをしたときには、おまえらしくないよと言うけどね」と河本監督。 宮下のトスを打ってきた山口は「トスの精度が上がっていると思います。スパイカー一人ひとりの好みやその日の調子を見て、トスを変えたり、考えながら上げている」と成長を認めた。 勝利したセミファイナルの東レ戦と久光戦。ブロック得点は東レがわずかに2点、久光も4点にとどまっている。センターのクイック、レフト・センター間やライトへの速いトス、そこに栗原の高さのあるサイド攻撃やバックアタックを絡める。宮下の思い切りのいいトスを基点としたシーガルズの速いコンビバレーが功を奏した結果だろう。
ブロックも際立ってきた
トスワークだけではない。今季、もう一つ目を引くのがブロックだ。 宮下は177cmある。河本監督によると、「177.5かな、まだ伸びていて、体が痛いと言っているよ」という。その高さも武器になり、今季、レギュラーラウンドの宮下のブロック得点は42。シーガルズの中では、ミドルブロッカーの山口、関(45得点)と遜色ない数字である。 セミファイナルでも宮下は6得点を挙げた(東レ戦はチーム最多の5得点)。シーガルズ全体では35得点、対する久光は21得点。まるで、「サーブで崩してブロックでしとめる」とレギュラーラウンドで8チーム中1位の決定本数(セットあたり2.82本)を挙げた久光のお株を奪うブロックだった。 それでも、大阪国際大和田中学時代、シーガルズの選手になったばかりのころの宮下は、ブロックは嫌いだったという。そのころから宮下を見ている記者に聞くと、当時は「まだ細く華奢で、筋肉もついていなかったから、ブロックに跳んでもはじかれることが多かった、それで得意じゃなかった」のだという。トスに関しても、中学とは違う大きなボールを使うようになったため、ドリブルをとられることが多く、平行も伸びなかったという。そのため、宮下はベンチプレスなど、トレーニングをかなり積んだ。「あのころに比べると肩とかかなりたくましくなってきましたね。力強いブロックができるようになったと思います」。 ブロックのできる大型セッター。対世界を考えれば、やはり待望であり、その育成は急務と言われる。 全日本女子は159cmの竹下を司令塔に、ロンドン五輪で銅メダル、先のグラチャンでは159cmの中道の多彩なトスワークで3位。確かに2人には身長をカバーするだけのうまさや正確さがあり評価も高い。しかしその一方で、前衛時のブロックや、ブロックとレシーブの関係などに課題があったのも事実。ブロックがきっちりそろっているのとないのとでは、バックの拾いやすさが変わってくる。