<女子バレー>躍進の19歳セッター宮下遥。初のVリーグ制覇へ、夢に挑むとき
自分からしかけるトスが増えてきた
宮下遥、19歳。V・プレミアリーグ女子唯一の市民クラブチーム「岡山シーガルズ」の正セッターで、ポスト中田、ポスト竹下と言われる逸材だ。177cm、待望の大型セッター。その宮下が、「期待される存在」から「本物」へと躍進を遂げている。 セミファイナル最終戦。相手は昨季の覇者で、今季、皇后杯(全日本選手権)を含め5連敗と勝てていない久光製薬。その女王を、キャプテン山口のブロードで、ついにマッチポイントまで追い詰めた。24-21。3-0か3-1で勝てば、初めて優勝決定戦へ進むことができる。しかし、久光も意地を見せる。エース長岡のバックアタック、セッター狩野のブロックで24-23まで迫ってきた。あと1点。並ばれると、リズムが移り勝敗の行方が変わる可能性がある、バレーボールの怖さだ。 その場面。セッター宮下が選んだのはミドル(センター)の川島だった。バックトスの速攻。それが決まり、シーガルズのファイナル進出が決まった。 あのときもそうだった。河本昭義監督の地元、岡山・笠岡市での日立戦。試合は第5セットまでもつれる接戦になった。一進一退、13-13。その場面で、宮下が上げたのもミドルだった。ハッとした瞬間、川島のクイックが決まり14点目、最後は相手のミスが出て、シーガルズが勝利した。 「あれはよかったね。彼女らしいトスワークだった」と河本監督もほめた。後からわかったことだが、実は宮下はその最終セット、右足首をねんざしながらトスを上げていた。 苦しい場面でセンターを使えるかどうか。 「いいセッター」か、見極める一つのポイントである。それは、同じ15歳で全日本に選ばれたことで比べられることの多い久光製薬・中田久美監督が評価された点であり、彼女のトスワークの真髄でもあった。 シーガルズの正セッターを務めるようになって3度目のシーズン。今季は、ここぞというところで、あえて、センター、ライトと自らしかけるトスが増えてきた。 「相手が調子悪いときでなければ、レフト1本では勝てない。うまくセンター線が使えないと、(上位には)きついと思うから。チームがうまくまわらなくなったとき、これまでは誰かが流れを切ってくれたけど、スパイカーに頼ってばかりではいけないと。しんどいときに、自分が考えてやらなきゃいけないと思ってやっている」と、宮下は言う。