児童手当の第3子増額分を受け取れない? 違和感がある児童手当の「きょうだいカウント」とは
少子高齢化の現状を解消するために、「異次元の少子化対策」が政策とされ、その後は具体的な内容としての「少子化対策推進基本方針」が厚生労働省から公表されています(※1)。 その中では児童手当が増額されることが明記されており、その結果、ニュースなどでは第3子以降については児童手当が月3万円に引き上げられるということが大きく取り上げられました。 この「第3子」「月額3万円」という数字ばかりが独り歩きしているようですが、注意点はないのでしょうか。詳しく見てみましょう。
基本の「き」。児童手当の制度をおさらい
児童手当法では、18歳の誕生日後の最初の3月31日を迎えるまでを「児童」だと定義しています。つまり、児童手当が受け取れる期間は0歳から18歳までの誕生日ではありません。受け取れる期間は、子どもそれぞれの誕生日によって異なるというわけです。 このように、子どもが1人であれば、金額も受給期間もシンプルな児童手当の仕組み。今回、ニュースとなり、大きく取り上げられた理由は「第3子からは3万円が支給される」という点です。 では、もし子どもが3人きょうだいであれば、一番下の子は0歳から18歳までの19年間に月3万円・合計684万円受け取れるかというと、実はそうではありません。 「第3子」というのは、きょうだいがいる場合の3番目という意味ではありません。18歳で成人となり高校を卒業した人は、もう「児童」とみなされません。 第1子の高校卒業後は第2子、第3子が繰り上がって、それぞれ第1子、第2子となるという“きょうだいカウント”の方法が理解されていないのです。このカウント方法は、第3子が増額される予定の2024年10月分からも同様の考え方が踏襲される見通しです。
第3子、月3万円受け取れる児童手当。得する人はいる?
先に述べたような「児童」の定義を考えると、例えば年齢が1歳ずつ離れた3人きょうだいでは、第3子が月3万円を受け取れるのは高校1年生までです。第1子が高校を卒業すると、月1万円に減るからです。 厚生労働省がまとめた「出生に関する統計の概況」(※2)によると、これまでは、ほとんど単産(単胎で生まれる。つまり1回の出産が1人)であることがわかります。もし、きょうだいの年齢差が4~5歳離れていると、第3子としての増額は平均的には中学生で終わることが予想されます。 もともとひと月あたりの児童手当は、3歳未満は1万5000円、3歳以上小学校修了前と中学生は1万円と決まっていますから、シンプルに、この総額を考えると約200万円が児童手当として受け取れます。 これが、第3子がいると約600万円(注)と3倍になるかというとそうではありません。高校卒業まで倍増となるのは“「三つ子」のケースのみ”となるというのはあまり知られていないでしょう。 お子さんたちの年齢差によっては、第3子の増額分を受け取れる期間が限られる、もしくは受け取れないというケースもあります。今回の改正によって得ができるご家庭はとても少ないのです。 (注:単純計算 3万円×12ヶ月×18年間=648万円)