「予算オーバーは当たり前」グリコのSAP移行トラブル、専門家に聞く「本当の問題点」
そもそもSAPに移行する必要性はあったのか
今回のトラブルの原因を推測していくと、日本型の製番管理がしづらいSAPにシステムを移行する必要が果たしてあったのかという根本的な問題にまで戻ってしまう。 鍋野氏は「つまりSAPを使った生産管理をどこまで真剣に考えているのか?ということに尽きます。生産管理と販売管理は企業の根幹です。どう見積もるか、どう作るか、ここは他社と共有できない部分で、開示できないノウハウとして、最後の牙城にもなるところです。会計のように決められたレギュレーションとは違う世界なので、そこを踏まえて検討したほうが良いでしょう」とアドバイスする。 それでも江崎グリコが生産に関わる部分までSAPに移行しようとしたのは、海外展開を強化したいという目的があったのかもしれない。 これは同社だけの問題ではなく、過去を振り返ると似たような失敗事例がたくさん転がっており、氷山の一角でしかない。 最後に鍋野氏は「冒頭で触れたトクヤマの事例ではSAPを導入して過去に2回ほど失敗しましたが、現在はうまく動作しています。結局は試行錯誤しながら自社のものにしていくことが正解ではないでしょうか。システムも磨いて初めて道具としての真価を発揮できます。少し卑近なたとえですが、SAPを検討する企業によく尋ねるのは、わざわざコンビニにフェラーリで買い物に行きますかということです。やはり身の丈に合ったクルマのほうが便利で良いのではないかと思います」(鍋野氏)