異色の「一日中猫まみれ編成」、BSテレ東“猫の日プロジェクト”7年目の進化
2月22日(木)の「猫の日」、BSテレ東が『BSキャッ東』と社名を変更して、まる一日、猫にまつわる番組だらけで放送する。この“猫の日特別編成”企画は今年で7年目となり、猫のための情報番組や猫好きタレントが語り合う番組などの放送をはじめ、今年度は保護猫の啓蒙活動や番組外でも保護猫譲渡会など“猫助け”のイベントを開催するなど、プロジェクトは活動の幅を拡げている。なぜBSテレ東が猫の日企画を行うのか、本プロジェクト事務局責任者であるBSテレ東編成局次長の浅岡彩子氏に話を聞くと、「やるからには徹底的に」という独自路線を貫くテレ東イズムあふれる秘話が飛び出した。 【写真】もっふもふ…ネコ特番の収録画面をチェックするねこちゃん ■可愛い猫を見てもらうエンタメ的企画からスタートし、7年目に突入 ――浅岡さんは普段どのようなご担当をされているのでしょうか。 本業はコンテンツビジネスという部署で、番組販売やコンテンツのビジネス展開、主に配信やビデオグラム化といったことをやっています。ほかにもオリジナルドラマの制作や、映画への投資といった映像事業にテレビ東京と一緒に関わるなど、映像事業全般を担当しています。 猫の日関連でいうと過去には猫を題材としたドラマを猫の日のために作ったり、「ねこじゃすり」という老舗のやすり屋さんが作っている猫専用のブラシなど、猫が喜ぶものを集めて販売もしています。 ――BSテレ東の猫の日特別編成はいつからはじまったのでしょうか? 2018年の2月からやっているので、今回で7年目になります。休まずに毎年やり続けてきました。今では、他局さんでも「猫の日」にちなんだ企画をやっているところもありますが、猫の日企画としては結構老舗になってきています(笑)。 ――猫の日プロジェクトがはじまった背景を教えてください。 企画が立ち上がった2018年当時の弊社は「BSジャパン」という社名でした。2月22日は猫の日ということで猫にまつわる番組やCMを集めて流したいという若手社員からのアイディアがあり、当時から、「やるからには他局がやらないようなことに積極的にチャレンジしよう」という社の方針があって、1つの番組だけじゃなくて、1日中猫番組をやるぞ!社名もその日だけは「BSニャパン」だ!ということになりました。CMも猫が出てくるものを流して、徹底的にやり尽くす意気込みは初年度からありました。それが、毎年続けているうちに、業界内外に定着してきた形ですね。 ――企画のスタートは「猫のために」という社会的意義ではなく、猫を題材に面白いことをやろう!ということだったんですね。 そうですね、最初は可愛い猫の映像をたくさん視聴者に見てもらおうというシンプルなスタートでした。その後、コロナ禍に突入して、猫を飼っている世帯がさらに増えたんです。外に出られなくなって、家猫が増えたということも大きかったです。そのあたりから、少しずつですが、「可愛い」だけじゃなくて、もっといろいろな情報を届けよう、猫のことをもっとちゃんと考えようという流れになってきました。 猫の病気のことや、保護猫の話とか、猫にまつわる問題をちゃんと考えようっていう番組を作ったり、当初からある可愛い猫を見せる番組だったり、 猫が大好きなタレントさんが集まって猫愛を語る番組など、多角的に猫を捉えていこうというのが最近の話ですね。 ■「猫の幸せは私の幸せ」、今年はポジティブな「猫とのおでかけ」情報も ――猫の日プロジェクト、7年目とのことですが、今年は新しい動きは? 昨年度までは、2月22日の猫の日に向けて盛り上げようっていう取り組みだったんですけれど、今年度からは猫プロジェクトと名前を変えて、2023年4月の年度の最初から年間を通じての活動になりました。 6月は、東京ドームのギャラリーアーモ(イベント会場)で、“猫助け”と言ってるんですけれども、保護猫の譲渡会を含むイベントを実施しました。10月からは、朝のミニ枠で猫の情報番組をスタートさせました。年間を通じて全社的に猫に関わることをやっていこうというのが今年の新しい動きですね。 ――毎年、実施する内容はどのように変わっているのでしょうか。 「オールねこ感謝祭」は、もう長くやっていますので基本的なコンセプトは変えていません、「ネコにゃん」はゴールデンタイムの食事タイムに可愛い猫をいっぱい見てほっこりとしてもらいたい番組です。 ほかにも「猫の幸せは私の幸せ」と掲げて、社会的な内容の番組も放送してきました。猫の死因に多い腎臓病のことを取り上げたりもしてきましたが、今年は、ポジティブな話題に寄せて、コロナが5類に移行して猫と出かけたい方も多いと思いますので、猫と一緒に旅に出かけるノウハウを紹介したりする予定です。今後も、その年の世相に合わせて猫の情報を発信したいですね。 放送外でも今年初めての試みになりますが、新宿駅の東口にある飛び出す猫ビジョン「クロス新宿ビジョン」に22日の深夜まで、BSキャッ東マスコットキャラクターの「るるる」が登場します。るるるが飛び出してくるCMだったり、巨大猫ちゃんとのコラボCMも流れます。BSを視聴できない方や、外国の方も、なんだあれは?と、目を止めていただけると嬉しいです。 ■「やるからには徹底的に」テレ東イズムが猫の日プロジェクトにつながった ――そして今はBSテレ東の猫の日特別編成は恒例となりました。視聴者からはどのような反響がありましたか? 保護猫イベントの会場にいらした方たちと会話をすると、「2月22日に、猫のことばっかりやってる局」ということが知られてる実感はありますね。昨年誕生したマスコットキャラクターの「るるる」はやっぱり子どもたちから人気で手応えもあります。「2月22日はBSキャッ東になります」と言っていても、ちょっと物足りなかった部分が、マスコット的な存在ができてよかったです。2月になると、みんなこの子(るるる)を思い出すみたいな親しまれ方になれると嬉しいです。 ――他局で2月22日の猫の日の企画はありそうな気がするのですが、なぜやってないのでしょうか。 最近、業界誌で見たんですけど、TBSラジオさんは今年から1日中猫の日企画をやるとのことで、本当にコラボしたいなと思っています。もちろん他局さんも、猫や動物の番組はやられているんですけれども、 社名もロゴも猫に引っかけて変更して、キャラクターも開発してっていう、そこまでやりきることはさすがにすぐには難しいのかもしれないですね。 ――独自路線を貫くテレ東のことを「俺たちのテレ東」というようなネットミームもあるくらいですが、そこの「徹底的にやりきる」というテレ東イズムと猫プロジェクトは通じるものがありそうですね。 あるかもしれないですね。社長も「るるる」のグッズを身に付けていますし、若手からベテラン世代も「やるからには…」という空気はあると思います。社風かもしれませんが、「どこかにぬかりはないか」と各セクションが目を光らせています(笑) ――最初は面白いことをやろう、というエンタメのアプローチから始まった企画が、世に認知されていくにつれて、社会的意義のある取り組みに広がっていったんですね。 はい。今年もチャリティキャンペーンを実施していまして、アニマルドネーションという団体にキャンペーンや売上の一部を寄付をさせていただきます。それによって、保護猫だけでなく保護犬の助けにもなりたいですね。能登の地震で被災した猫ちゃんたちにもその寄付金が回っていくということも聞いています。視聴者の方々の応援をいただいて、これからも“猫助け”の活動を積極的にやっていきたいですね。 ――2月22日が終わった後、今後猫プロジェクトはどうなっていきますか?目指せ10年でしょうか。 そうですね、10年はやると思います。 ――ちなみに、猫はこういう風に恒例となり認知もされています。ワンちゃんの日のようにほかの動物のプロジェクトができる可能性はいかがでしょうか。 実は「犬はどうする」という話はよく聞かれるのですが、ワンちゃんに関しては、他局さんにお任せしたいと思います(笑)。今のところは猫をやりきることを考えていますね。