<転生したらスライムだった件 第3期>中山敦史監督に聞く第3期の振り返り&最終話の見どころ「最後はいつもの『転スラ』で締めます!」
サラリーマン・三上悟がスライムのリムル=テンペスト(CV:岡咲美保)として異世界に転生、さまざまな種族が共に暮らせる理想の国作りに奮闘する「転生したらスライムだった件」(毎週金曜夜11:00~11:30ほか、日本テレビ系ほか/ABEMA・ディズニープラス・FOD・Hulu・Lemino・TVerほかで配信)。2021年以来となるTVアニメシリーズ第3期では、「魔王達の宴(ワルプルギス)」を経て正式に魔王となったリムルのもとへ、魔物を敵視する神聖法皇国ルベリオスの聖騎士団長・ヒナタ(沼倉愛美)が訪れる「聖魔対立編」が描かれ、放送中の2クール目からは開国祭に向けての「魔都開国編」が描かれている。最終話を残すのみとなった今、中山敦史監督に改めて第3期の魅力を語ってもらった。(以下、ネタバレを含みます) 【写真】リムルのクールな表情が印象的なシーン「転生したらスライムだった件 第3期」より ■シリーズ最大の「宴」が見せ場 ーー中山さんは第1期では副監督、第2期から監督を務めていらっしゃいます。本作の人気ぶりはどうご覧になっていますか。 中山 アニメシリーズの第1期が始まったときから、それまでに経験したことがないほど多くの反応をいただいて、驚いたのを覚えています。誰に会っても「面白い!」って言っていただいたり、それこそアニメにはあまり詳しくない地元の友達からも「観てるよ」って言われたり。もちろん原作の知名度や人気がとても高いということは大前提ですけど、アニメシリーズを通じて、さらに盛り上がっていったのかなという感覚があります。 ーー監督としては、本作のどんなところが人気の秘訣だと感じていますか。 中山 やっぱり主人公であるリムルのキャラクター性と、「国作り」という展開にあると思います。異世界転生モノってたくさんの作品がありますけど、単純な強さだけではなくて、いろいろな人たちとの交流や交渉を軸にして国を作っていくという話はこれまでほとんどなかったと思いますし、それができるのも、みんなを惹きつけてやまないリムルという魅力的な存在がいてこそだと感じています。 ーー第2期でリムルは魔王となり、国作りも成し遂げました。そこからの第3期ということで難しさもあったと思います。 中山 そうですね。第2期でシリーズ最大のイベントを迎えましたからね。ただ、第3期のポイントは、魔王になったリムルがこの世界から受け入れられていく過程とお披露目というものなので、第2期とはまた違った盛り上がりを目指して作っていきました。 ーーそのピークが「開国祭」ですね。 中山 そうです。リムルって、何かめでたいことがあるたびに宴を開くじゃないですか? 最初は側近たちだけだったのが、他国のVIPや為政者など、だんだんとスケールが大きくなっていって、その頂点が「開国祭」なんですよね。あんなに小ぢんまりしていた宴がついにここまで来たのかと、そのスケール感を味わっていただけると嬉しいですね。 ■会議シーンで「プリヴィズ」を活用!? ーー「開国祭」はオールスター集結のようなもので、今回久々に登場したキャラクターも多いですよね。これだけキャラクターが多いと、管理はなかなか大変ではないですか? 中山 話数を重ねるごとにキャラの数が増えているので、管理はかなり大変です。そもそもキャラ設定を探すだけでもひと苦労で(笑)。ただ、「開国祭」では、貴賓席のカットなどでは劇場版やスピンオフエピソードに登場したキャラクターたちも登場させることができ、そういうところではキャラが多くて良かったなと思いました。ありきたりなモブを配置せずに済みますし、なによりシリーズのファンの方に喜んでもらえましたから。 ーーたしかに劇場版のキャラが登場したのは感激でした。ちなみにアニメーション制作において、今回の第3期から挑戦した試みなどはありますか? 中山 一部の話数で「プリヴィジュアライゼーション」(通称、プリヴィズ)を導入しました。これはレイアウトやカメラワーク、キャラの芝居までをあらかじめ3DCGで作っておくというもので、僕としても初めての経験でした。最初はやはり手探りで、うまくいかないことも多かったんですけど、だんだんと慣れていって、最終的にはかなり活用しまして、自分なりに手応えを感じました。 ーーカメラワークの激しいバトルシーンなどに使用されているんですか? 中山 いや、僕も最初はバトルで使うんだろうと思ってワクワクしていたんですが、結果的には会議シーンで多く使っているんです(笑)。会議シーンはともすれば単調になりがちなので、プリヴィズを活用していろいろなアイデアを試して、面白い演出ができないかと探っていきました。 ーー意外なところに最新技術が使われていたんですね。やっぱり『転スラ』と言えば「会議」ですもんね。 中山 そうですね。今期も序盤は会議ばかりしていましたけど、ここをすっ飛ばして、ヒナタとの戦いや「開国祭」だけを見せるというのは『転スラ』ではないですからね。 ーーけれど、その会議でのコメディ描写も『転スラ』らしさですよね。 中山 ありがとうございます。一般的には会議シーンは全くアニメ向けではないんです。でも、そこが『転スラ』の魅力のひとつでもあると思っているので、なるべく飽きないように演出をしながら、情報を積み上げていくことは意識しました。 ■ミョルマイルの芝居が第3期を一層明るく ーー第3期でとくに印象的なシーンを振り返っていただけますか。 中山 いくつもありますが、序盤で言うとヒナタとルミナスの関係性が明らかになる一連のシーンです。第2期の冒頭から登場しているヒナタですが、彼女がルミナスと戦い、負けたことでルミナスの配下に加わっていたというエピソードはこれまで描かれてこなかったヒナタの過去なので、そこはなるべく印象深く描ければいいなと思っていました。ヒナタに関しては、今回いろいろな一面が明らかになるキャラクターなので、とくに丁寧に描こうと意識しましたね。 ーーヒナタで言うと、リムルとのバトルも凄かったですね。 中山 このふたりは第2期で一度戦っているので、それを超えるバトルにしなくてはならないというところが苦労しました。リムルも魔王になって強くなっているし、ヒナタも奥義を繰り出すなど、お互いに100%の状態でのぶつかり合いですから、それが伝わるように、いろいろなアイデアを出し合いましたね。リムルの「未来攻撃予測」はどんな映像にしたらいいんだろうと、かなり悩みました。これはヒナタ戦に限りませんが、バトルに関してはより激しく、よりスケールアップしていかないといけないわけですよね。シリーズものの宿命ですが、そこに毎回難しさを感じます。同時に、僕としては今回やり切れたかなと思っています。 ーー中盤以降で印象深いシーンは? 中山 個人的にはミョルマイルの活躍ですね。第3期まで進んで、まさか彼がこんなにもイキイキと描かれるとは思っていなかったので(笑)。通常の作品であれば、ミョルマイルのような戦闘要員ではない裏方キャラがここまで描かれることは少ないと思いますが、そのあたりはやっぱり『転スラ』だなと感心させられます。 ーー第1期の登場時からそうですが、リムルとの掛け合いも相変わらず独特な雰囲気ですよね。 中山 悪代官と越後屋みたいなノリですよね(笑)。いかにも悪友っていう雰囲気がいいですし、ミョルマイルはリムルが国王であり魔王であることも普通に受け止めていて、実は器の大きな人間なのではないかと思いますし、好きなキャラです。 ーー第68話(第3期20話目)で、現金不足問題が起こった際のミョルマイルの「使えませーん」の2連発が好きです。 中山 分かります(笑)。あのシーンは、演じている青山穣さん本人なのかミョルマイルなのか、僕たちにも判断がつかなくて(笑)。青山さんご本人もすごく楽しい方で、ずっとノリノリで演じてくださいましたし、ミョルマイルというキャラクターは青山さんにしか分からないところがあります。結果的に楽しいキャラクターに仕上げてくださって、そのおかげで第3期全体のトーンが一段階明るくなったと感じているので、青山さんには本当に感謝しています。 ーー終盤の「開国祭」周りで印象に残っているシーンはありますか? 中山 作画的に大変だったのは、やはりシュナとシオンの二重奏シーン(第68話)です。ここは先に演奏シーンの尺を決めて、それに合うように音楽担当の藤間仁さんに楽曲を作っていただいたんです。それをプロの演奏家さんが演奏して、その際の実写映像を参考に作画しています。これもテレビシリーズでやったら怒られるような手法なんですけど、開国祭の豪華さやスケール感を表現するには外せないと思い、なんとかやらせてもらいました(笑)。 ■最終話はいつもの『転スラ』へ! ーー残すところ最終話のみとなりました。最終話の見どころをお聞かせください。 中山 第71話(第3期23話目)で「開国祭」の全イベントが終了していますから、最終話は「祭の後」のような状態ですね。少しのもの悲しさがありながらも、いつも通りの『転スラ』に戻っていくお話です。 ーーリアルタイム視聴ができなかった人には、ぜひTVerでの視聴もオススメしたいのですが、中山監督はTVerを利用されることはありますか。 中山 便利なので、僕はいつも使っていますよ。知り合いやスタッフからオススメのドラマや番組を教えてもらった際、まず最初に確認するのはTVerさんです。『転スラ』の最終回を見逃したという方も、ぜひTVerさんほか、いろんな配信でも観ていただけたら嬉しいです! ーーありがとうございます。では最後に、シリーズファンに向けてメッセージをお願いします。 中山 ここまで視聴していただき、ありがとうございました。皆さんからの反響や応援は、僕たちにも届いていますし、スタッフ一同、すごく励みになっています。これからもチーム一丸となって、これまで以上に力を注いでいくつもりですので、引き続き『転スラ』の応援をよろしくお願いします。 ■取材/アンチェイン 文/岡本大介