【「冷凍食品」業界最前線最新ビジネスレポート】コロナ禍で激変!食卓の主役をめぐる「アツい戦い」
「冷凍食品は、お弁当のおかずの数合わせ」 そんなFRIDAY記者の認識をブチ壊したのは、JR新浦安駅を降りてすぐ、「イオンスタイル新浦安MONA」の1階にある冷凍食品専門店「@FROZEN」だった。 【ひと目でわかる!】「冷凍食品はお弁当の数合わせ…」の時代は終わり!冷凍食品業界の「最新勢力図」 店内には1500品目もの冷凍食品が所狭しと並んでおり、冷凍ベーカリー、黒毛和牛ハンバーグなど3000円超えの本格的な洋食まで買うことができる。 「冷凍食品しか置かない店なんて、考えられませんでしたよ。ただ、ここ2~3年で爆発的に冷凍食品の需要が高まった。コロナ禍によって、消費者が自宅で一人でチンして食べられる冷凍食品の手軽さと美味しさに気づいたのです。コロナ以前から徐々に築かれてきた『おつまみ』や『ガッツリメシ』としての地位も、さらに強固なものとなっています。現在全国に5店舗しかない『@FROZEN』も、これからさらに増えるでしょうね」(冷凍食品マイスターのタケムラダイ氏) 実際、コロナ以前の冷凍食品の数は普通のスーパーで約200点、大型スーパーで300~400点が平均的だったが、現在ではそれぞれ400~500点、700~1000点に増加しているという。 この変化を最も如実に表している商品が実は「シュウマイ」なのだ。タケムラ氏が続ける。 「これまで冷凍シュウマイは、弁当の隙間を埋めるため小さく作られていた。この常識を覆したのが、味の素冷凍食品から発売された『ザ★シュウマイ』です。一つあたり30gとかなり大きなサイズで、しかもそれが9個入っている。粗挽きの国産豚肉と大きくカットされたたけのこ、たまねぎ、しいたけがふんだんに使用されています。小栗旬さんが『ザ★シュウマイ』で白米をバクバク食べるCMが印象的でしたが、まさに食卓でメインのおかずとして食べられる一品です」 発売は’16年だったが、コロナ禍で売り上げを大きく伸ばしたという。 「『ザ★チャーハン』も根強い人気を誇っています。味の素冷凍食品は商品点数こそ少ないものの、王道商品に大きなリソースを割いているのが特徴です。大物芸能人を使ったユニークなCMに象徴されるように、卓越したブランディングとマーケティングで売り伸ばす力も持っています。そしてなにより、家庭用冷凍食品の中で最も売れていると言われる『ギョーザ』(年間売り上げ200億円以上)を持っているのが強み。そのこだわりようはすさまじく、発売開始から50年以上経っても改良を続けているそうです」(冷凍食品専門家の西川剛史氏) 味の素冷凍食品との正面衝突を避け、冷凍餃子を出さないメーカーが多いなか、「ギョーザ」で勝負を挑む者が現れた。冷凍食品専門家の山本純子氏が語る。 「イートアンドフーズの『大阪王将 羽根つき餃子』が大躍進を遂げています。大阪王将もイートアンドフーズも、同じ『イートアンドHD』のグループ会社で、もとは一つの企業。このタッグで’18年に『フタいらず』で焼く餃子という技術革新を生み出した。このインパクトは強く、同商品の売り上げは翌’19年に年間100億円を突破。味の素の『ギョーザ』との差を急速に縮めています。同社とのコラボでは『大阪王将 直火炒めチャーハン』も好調で、伸び盛りの注目企業です」 ほかにも「大阪王将 暴走背脂ニンニクぶた餃」など、イートアンドフーズは王道を行く味の素とは異なる″変化球″でおつまみ&ガッツリメシ需要を獲得し、業界に殴り込みをかけている。 一方、業界2トップの一角を担うニチレイフーズは、冷凍チャーハンのカテゴリーで最も売れている「本格炒め炒飯」、から揚げカテゴリー1位の「特から」をはじめ、スイーツ系で独壇場の「今川焼」、元祖レンジ対応コロッケである「衣がサクサク牛肉コロッケ」など、多彩な引き出しで数多のヒット商品を手掛けている。 ニチレイフーズは、斬新な発想でヒット商品を生み出すことに成功している。 ◆各社の強みを活かしたゲリラ戦 「昨年、レトルトカレーなど常温品の生産を担っていた山形工場に冷凍麺のラインを新設しました。そこで作った第1弾の新商品が、氷を載せた『冷やし中華』。氷は電子レンジのマイクロ波の影響を受けにくく、チンしても溶け残る。この氷で温まった麺を冷やし、冷やし中華を完成させるんです。この画期的な発想が大好評を博しました。麺類に可能性を見出したのか、今年は今田美桜さんをCMに起用した『香ばし麺の五目あんかけ焼そば』を売り出しており、さらなる飛躍が予想されます。ただし、味の素もニチレイも、盤石ではありません。業界の上位進出を狙う中堅どころが数多く存在するからです」(山本氏) 2トップの後に続くのは、1931年に日本初の冷凍食品『イチゴシャーベー』を生み出した最古参・ニッスイだ。 「同社の定番商品と言えば『大きな大きな焼きおにぎり』。お米自体が美味しく、シンプルな醤油の味で飽きがこない。野菜が多く入った『わが家の麺自慢 ちゃんぽん』などロングセラー商品でリピーターを獲得しています」(西川氏) このニッスイのライバルが、同じく水産会社をバックグラウンドに持つマルハニチロだ。 「マルハグループとニチロが経営統合して’07年に誕生した企業。マルハの前身は大洋漁業ですから、水産の調達力が高く、『えび&タルタルソース』や『あじフライ』など魚介系の商品が安定した売り上げを誇っています」(西川氏) マルハニチロが得意分野の水産で優位に立つなら、カップ麺最大手の日清食品をグループ企業に持つ日清食品冷凍は、麺類に特化する。 「生麺のような食感が楽しめる『もちっと生パスタ』シリーズのほか、冷凍ラーメンも人気。『日清中華 汁なし担々麺 大盛り』は年間売り上げ20億円超えの人気商品です」(山本氏) 日清食品冷凍と同じく麺類で存在感を示してきた製粉大手のニップンは、コロナ以降の「おひとりさまメシ」需要に健康志向を掛け合わせた画期的な試みで新たな収益源を作り出した。 「一つの商品で主食とおかずを摂ることができる『よくばり』シリーズは、栄養バランスも考慮されており、料理はできないが、それでも健康は気になる人々にとってはもってこい。ニップンが牽引する『ワンプレートブーム』の流れに乗って、マルハニチロやニッスイ、ニチレイも同様の商品を出すなど、オールイン需要を受けた”ワンプレート”の局地戦が起こっています」(山本氏) 2強が餃子と炒飯という看板商品を引っ提げて君臨する中、後続が各社の武器を活かして台頭し、アイディア商品でゲリラ戦を繰り広げる。コロナ後の冷凍食品業界の争いは、どんどんアツくなる。 『FRIDAY』2023年11月24日号より
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