昭和文士は迫力十分 大阪・今東光資料館で藤本義一との交流振り返る企画展
昭和文士は迫力十分 大阪・今東光資料館で藤本義一との交流振り返る企画展
大阪ゆかりの作家今東光の業績を顕彰する大阪府八尾市の今東光資料館で、今東光と同じく大阪で活躍した作家藤本義一との交流を振り返る企画展が開かれ、文学ファンらの間で熱い共感を呼んでいる。両氏はともに直木賞に輝き、自由を尊ぶ作家集団「野良犬会」の盟友。たくましい昭和の文士たちに、乱世を生き抜くパワーを学びたい。企画展は来月12日まで。
異彩を放つ「野良犬会」の屏風
1枚の屏風が異彩を放つ。今東光を会長に仰いで集まった作家集団「野良犬会」の作家たちの名前が、連名でしたためてある。今東光を筆頭に、柴田錬三郎、黒岩重吾、野坂昭如、戸川昌子、吉行淳之介、井上ひさし、梶山季之など――。文学が民衆にもっとも読まれた昭和の文壇を代表する流行作家たちだ。 しかも、権威に縛られることなく、自由に活動しようという共通の意志から、野良犬会と命名されたという。大阪で試練の末、直木賞を受賞した藤本義一を祝福するため、屏風を順に仕事場などへ回しながら、ひとりずつ筆を執って完成させ、藤本に贈られたという。 制作時の逸話を含めて、昭和文学の文化財といえるのではないだろうか。企画展は今東光資料館と「藤本義一の書斎」の共催で実現した。
取材を徹底し一気呵成に書き切る
今東光は1898年、神奈川県生まれ。早くから文学を志し、23歳で第6次「新思潮」発刊に参加。ざん新な作風から、のちに川端康成、横光利一らとともに『新感覚派』と称される。戦中戦後の雌伏の時代を経て、1951年、八尾市の天台院に特命住職として着任し、八尾の住人となる。 八尾の文化風土や人々をこよなく愛し、ほとんど描かれることのなかった河内人の物語を、精力的に書き進めていく。57年、「お吟さま」で直木賞を受賞。執筆スピードは速かったが、書きなぐったわけではない。闘鶏の世界に肉薄した「闘鶏」では、短編ながら現場に通い詰めてフィールドワークに打ち込む。 民俗学者の研究調査とも通じ合う。子どもの視点で闘鶏に熱中する大人たちを客観視する手法を編み出す。河内文化の奥深さに光を当てる濃厚濃密なる作品に仕上がった。