史上2校目となるウインターカップ3連覇…比江島慎が証明した「冬の洛南」の勝負強さ
■エースの仕事をやり遂げた3年生の決勝
高校生最後の冬、比江島はエースの力をいかんなく発揮した。この年の洛南はディフェンス力が上がっており、準決勝でインターハイ覇者の延岡学園高校を70-58で下して決勝に進出。決勝はインターハイの準決勝で21点差という大差で敗れた福岡第一と対戦。夏に大敗した苦手意識からか、ウインターカップ決勝も前半は福岡第一のペースで進み、10点ビハインドで折り返す。このとき比江島は、「インターハイの二の舞になるのでは」と不安がよぎったというが、後半は持ち前の勝負強さを発揮する。 今で言うところの「比江島スイッチ」が発動する合図となったのが、洛南がじわりじわりと差を縮めた第3クォーターの終盤。吉田コーチは約2分半、比江島をベンチに下げる決断に出ている。 「吉田先生が少し焦っていた僕を一度ベンチに下げてくれたので、第4クォーターからは思い切り行くぞと決めていました」と決意したエースは、第4クォーター開始早々に2連続ゴールをゲット。これで洛南が1点差まで迫ると、さらに1-2-2のオールコートプレスを仕掛けて勝負に出る。比江島は得点だけでなく、リバウンドやスティールなどディフェンスでも貢献し、エースとして最後のシュートを託される。 残り22秒、比江島は得意の1対1からボール浮かせてスクープシュートを放つ。そのボールは、リング上で何度か跳ね返ったのちにリングに吸い込まれていった。73-71。洛南が1ゴール差で激闘を制し、3年連続4回目となる日本一に輝いた。 3連覇がかかる決勝の舞台で仕事をやり遂げた比江島慎。試合後には、プレッシャーからか、極度の緊張を抱えたまま決勝に臨んでいたことを明かしている。それゆえに硬いゲームの入りになってしまったが、4クォーターでの勝負強さは圧巻だった。重責から解き放たれたエースは、試合後に安堵の表情を見せてこう語っている。 「決勝ではチームが苦しいときに点を取ることができて、3年間で一番エースらしい仕事ができたかなと思います。僕自身が重圧に勝てた試合でした。やっぱり冬に強いのが洛南です。ウインターカップだけは譲れませんでした」 文=小永吉陽子
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