岩井勇気が語る"小学生の時にドキドキしながらビデオを借りた「GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊」"<岩井勇気の推しアニメ>
様々なアニメ作品に精通しているハライチの岩井勇気さんが「大人にこそ観てほしいアニメ作品」を紹介するこの企画。今回は、9月13日(金)23:15よりWOWOWプラスにて放送される、1995年公開の押井守監督作『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』を紹介。西暦2029年を舞台に、草薙素子率いる公安9課・通称「攻殻機動隊」の面々が、国際的に指名手配された謎のハッカー"人形使い"をめぐる事件に巻き込まれていく姿を描く。圧倒的な映像美と哲学的ともいえる難解なストーリーが、『タイタニック』や『アバター』シリーズのジェームズ・キャメロン監督や『マトリックス』シリーズを監督したウォシャウスキー兄弟など、海外の超一流クリエイターをも魅了したとして知られる名作SFアニメーション映画だ。公開当時は小学生だったこともあり、初視聴はレンタルビデオだったという岩井さん。当時の思い出を織り交ぜながら、本作の魅力を語ってくれた。 【写真を見る】西暦2029年を舞台に、攻殻機動隊のメンバーが謎のハッカー“人形使い”を追う ■何度も観ていくうちに作品世界を理解できる楽しみが湧いてきた 初めて作品を観たのは、確か小学高学年か中学に入学するぐらいの時期で、自宅近くのレンタルビデオショップで借りて観ました。映画公開当時は、小学生だったこともあり、まだアニメにそこまでハマっていなかったですし、まだ「オタク」というのが恥ずかしいと感じていましたね。レンタルビデオショップには母親と一緒に行って、作品を借りていたのですが「これもちょっと借りて」と言い出しにくかったことを覚えています。確か5本借りるとレンタル料が安くなるというシステムで、最後の1本を見つけあぐねていた母親に「なにかないの?」と聞かれ、「まあ、強いて言えば...」みたいなテンションで借りてもらいましたね。でも、僕自身は、ずっと「GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊」が置いてあるコーナーが気になっていました。大人っぽくって、ちょっとマニアックで。当時の僕のような子どもの目線よりも上の棚に置いてあって、「めちゃくちゃ気になる」って思っていました。そのレンタルビデオショップには、よく足を運んでいて、行くたびに「GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊」や「AKIRA」といった作品がレンタル中になっていると「どんな人が観ているんだろう」って思っていました。 実際に作品を観た時は、やっぱり全部は理解できなかったですね。当時は、説明が少ない作品が多くて、何度も観ていくうちに世界観や登場人物の共通言語を理解できるということが嬉しかったりしましたが、本作でも、作品世界を少しでも理解できていることの優越感というか、楽しさみたいなものがすごくありました。これくらいのタイミングで自分がアニメオタクだという自覚が出てきたような気がします。 ■今観てもアニメーションが崩れていない、めちゃくちゃ丁寧な作画! 主人公が光学迷彩をまとって高層ビルから飛び降りる冒頭シーンに魅せられた⒞1995士郎正宗/講談社・バンダイビジュアル・MANGA ENTERTAINMENT この作品で最初に思い浮かぶのは、素子が光学迷彩という特殊な装備をまとって高層ビルから飛び降りると、彼女の姿が背景と一体化して見えなくなっていく、という冒頭のシーンです。まず「光学迷彩」という言葉がカッコよかったですね。ちゃんと日本の組織が名付けている感じが印象的でした。そして近未来の物語なのに、流れる音楽が古風なところもすごくカッコいいなって思います。 主人公の素子は、「義体」と呼ばれるサイボーグでもあるのですが、最初の頃はなかなか理解できませんでした。でも、義体が組み上がっていく過程を描くオープニングは、彼女の脳と脊髄の一部以外が義体化されているという設定が理解しやすいだけでなく、映像としてもめちゃくちゃカッコよくって、素子というキャラクターの設計図を見せられているという感じで、すごいワクワクしましたね。 そして、素子役の声優・田中敦子さんもハマリ役でしたよね。ときどき人間味をまるで感じない演技をされていて、すごいなと思いました。単調に演じている訳ではないのに、人間味がなくなるところにはゾクゾクしました。 正直なところ、宇宙が舞台だったり、巨大ロボットが登場したりするようなSF作品は、自分の想像の範疇外に行ってしまっている感じがするんですが、「GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊」は、今と地続きな感じがして、確かに想像ができるんですよね。今では、近未来が舞台のSFというと本作のような世界観の作品が多くて、「電脳」という言葉も、ちょっと説明したらすぐにわかるくらいの共通言語になりつつありますよね。この作品を観ておけば、他のSFアニメにもすんなり入っていけるようになると思います。 そして、今から29年も前の映画なのに、古さを感じさせないということも本作のすごいところですよね。今観てもアニメーションが崩れていなくて、お金をどれだけかけてるのかわからないですけど、めちゃくちゃ丁寧な作画だなと思います。子ども時代に出会ってしまったために、本作のような、ちょっと大人びたキャラクターデザインのアニメこそがすごいアニメなんだ、みたいな価値観になっちゃいましたね。 「GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊」を皮切りに、「攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX」シリーズや「攻殻機動隊 ARISE」といった刑事ドラマ的な作品も生まれ、さらに新作TVアニメシリーズも2026年放送に向けて始動するというニュースも発表となって、まだまだ続いていく「攻殻機動隊」シリーズ。その原点でもある本作をぜひ、この機会にご覧になっていただきたいですね。 ※インタビューは2024年8月7日(水)に行われたものです 取材・文=中村実香 岩井勇気●1986年生まれ。幼稚園からの幼なじみである澤部佑とのお笑いコンビ「ハライチ」として活躍。新潮社「僕の人生には事件が起きない」 「どうやら僕の日常生活は間違っている」が累計20万部突破。放送されるアニメ作品はすべてチェックし、毎日放送「岩井 狩野 えびちゅうの推しかるちゃー」やABEMA「SHIBUYA ANIME BASE」など、漫画やアニメに関する番組でもMCを務める。
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