サイバーエージェント、今年も初任給42万円 長時間労働リスクの懸念も
同制度を導入するのはベンチャーに限らない。労務行政研究所の「人事労務諸制度実施状況調査」によれば、固定残業制の導入率は04年の5.4%から22年には23.3%まで上昇した。低リスクの賃上げ手段として日本全体で導入が進んできた背景がある。 https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00342/041100182/z2.jpg 固定残業制の割合は年々増加。 従業員にとっても悪いことばかりではない。残業時間を短く抑えても賃金が変わらないため、生産性を高めれば時間単価の上昇に直結する。実際の残業時間より多く残業代を支払っているケースも多く、ある上場企業の若手社員は「残業なしで帰っても高給がもらえてありがたい」と話す。TOKYO BASEやサイバーエージェントも平均残業時間は80時間より短いとしている。 ●制度上の残業時間とかけ離れた実態 働き方や報酬制度の多様化も背景にある。ベンチャーを中心とする新規産業は、実績や能力に即して賃金を定める成果主義型の報酬制度を好む傾向がある。一方で労働基準法は基本的に、賃金は労働時間に対して支払うものと定めている。「労働基準法が制定されたのは1947年。現代の働き方に合わせて見直していくべき箇所もある」(小菅氏) とはいえ実態とかけ離れた固定残業制が横行するのは問題含みだ。労務行政研究所の担当者は「実態と制度上の残業時間に差があるなら、いったい何を根拠に固定残業の時間を決めているのか。企業は労働基準監督署に対して適切に説明できる必要がある」と話す。固定残業の時間の曖昧さは、給与そのものの曖昧さと直結する。企業はどんぶり勘定の給与形態を早急に脱し、金額の根拠を透明にすべきだろう。 北見氏は「成果主義かどうかによらず、人や時間あたりの単価を上げるのが企業の務め。従業員のためにならない制度は決して受け入れられない」と釘を刺す。業務の生産性を向上させ、従業員にとって真にメリットのある「短時間高収入」な給与制度を考案する必要がある。
杉山 翔吾