〈台風19号〉起きるのは意外な災害ではない 「想定内」に万全の備えを
大型で非常に強い台風19号が上陸する可能性が高まっている。61年前の「狩野川台風」に匹敵する記録的な大雨が降るおそれや、先月千葉県で甚大な被害を出した台風15号と同じレベルの記録的な暴風が、台風15号とは比べものにならないような広い範囲で吹くおそれがある。 行政はもちろん、個人レベルでも最大級の警戒が必要となる。
災害が起こる場所は狩野川台風と同じではない
気象庁が例に出した狩野川台風は、静岡県・伊豆半島を流れる狩野川の名前が付いているが、静岡県だけでなく、首都圏を含む関東地方にも記録的な大雨とそれに伴う災害をもたらした台風。 11日に記者会見した気象庁の梶原靖司予報課長は、台風の進路や勢力、また北上するスピードなどが似ていることから、予想される現象や災害程度を示すのに効果的であるとして、狩野川台風を類似台風にあげたが、今回の台風19号による災害が同じ場所で起きるわけではないことに注意が必要だ。
もはや台風の進路は関係ない
今回の台風は大型で、広い範囲に影響が出る見込み。このため、どの都道府県、あるいはどの市町村で、どのような被害が出るかを、正確に予測することは困難だ。 雨に関して言えば、台風本体や周辺にある発達した雨雲がかかる領域はもちろんのこと、それより早い段階で、沿岸部に「沿岸前線」と呼ばれる前線ができて、大雨となる可能性もある。 また、北陸地方や山陰地方など日本海側でも、大陸方面から日本海方面にかけて勢いよく高気圧が張り出している影響で、南との気圧の傾きが急になり、北からの湿った風によって総雨量が多くなる見込みだ。 普段、雨が少ない地方は、少ない雨量であっても、土砂災害などが発生するおそれがある。 加えて、風や波も怖い台風だ。台風19号については、もはや進路がどこを通るのかは関係ない。むしろ、さまざまな災害を起こしうる力を持った台風が、今まさに日本列島に襲いかかってきていると考えたほうがいい。
意外な災害は起きない
とはいえ、「自分が住む地区」といった小さいエリアまで絞って考えると、その場所で意外な災害が必ずしも発生するわけではない。 平成最悪の豪雨災害となった昨年7月の西日本豪雨の被害を振り返ると、被災した地域の多くは、それぞれ災害の危険性が事前にハザードマップなどで指摘されていた地域で、必ずしも「想定外」の災害ではなかった。 自分の地域の災害リスクをハザードマップで確認するなどして、想定された災害に対して万全の備えをしたうえで、台風をむかえたい。
大雨特別警報を待ってはいけない
気象庁は、今回の台風19号について、「状況によっては大雨特別警報を発表する可能性がある」としている。 しかし、大雨特別警報が発表される段階では、すでに重大な災害が発生している可能性が高く、行動を起こすには手遅れだと考えたほうが良い。 また、通常の豪雨災害と異なり、台風の場合は、強風や暴風が伴う。すでに鉄道各社が計画運休について発表しているように、移動手段も制限される。気象庁や自治体の発表する情報に注意し、いつも以上に早いタイミングでの行動を心掛けたい。 飯田和樹・ライター/ジャーナリスト(自然災害・防災)