「生ある限り頑張る」 大震災1年追悼式 妻子5人犠牲・寺本さん「天国で見守って」
「生ある限り頑張っていく」。1日に輪島市で営まれた能登半島地震、奥能登豪雨の犠牲者追悼式では、遺族が愛する人への祈りをささげた。あの日から1年。悲しみを背負った参列者は一つの区切りを迎え、前を向いて生きる決意を気丈に語った。一方で、亡くなった家族との思い出を語りながら、「気持ちに整理が付かない」と涙をこぼす遺族も見られた。 「みんなが支えてくれているから私もこうやっていられる。天国で見守ってね」。地震の土砂崩れに巻き込まれ、妻子5人を失った寺本直之さん(53)=金沢市西泉=は追悼式で、亡き家族にこう声を掛けた。 寺本さんの家族は、妻弘美さん=当時(53)=の実家がある穴水町由比ケ丘で親族と過ごしていた時に被災。弘美さんと長男琉聖さん=同(24)、次男駿希さん=同(21)、三男京弥さん=同(19)、長女美緒寧(みおね)さん=同(15)=が犠牲になった。 ●出窓に写真、声掛け日課 地震後、自宅の部屋の出窓に並べた5人の写真に「ただいま」と声を掛けることが日課となった。 美緒寧さんの写真近くには、卒業証書が飾られている。通っていた金沢市泉中が用意してくれた。昨年11月には現場で駿希さんの財布が見つかり、中にあった2千円札も置いた。 ディズニーランドで撮った家族の動画を今でも見返すという寺本さん。「アルバムや手紙も全部保管してある。(写真が)飾ってあるから寂しくないですよ」と気持ちを強く持つ。 追悼式前には旧盆以来、約4カ月半ぶりに由比ケ丘へと足を運んだ。土砂にのみ込まれた家屋や車は今も残るが、早ければ今月にも公費解体に着手する。 地震の爪痕が少しずつ目に映らなくなる中、「生きていく限り、みんなのことを伝えていきたい。忘れてほしくない」。節目を迎え、思いを強くしている。 ●「整理できない」「心に穴」 最愛の家族を失った悲しみから、複雑な胸の内を明かす遺族もいた。 珠洲市宝立町の避難所で夫の宏幸さん=当時(65)=を亡くした谷内田玲子さん(65)=能美市=は「うちの人の分も生きなきゃという気持ちと、どうにでもなれと思う気持ちが整理できない」と吐露。この1年は「皆さんに助けられてここまで来た」と涙を流した。 「心に穴が空いたままで、いつになれば埋まるか分からない」。豪雨で長女の美紀さん=当時(31)=を失った中山勇人(はやと)さん(62)=輪島市町野町=はこう話した。 田保剛さん(41)=金沢市無量寺町=は、昨年3月に死去し、関連死認定された母みどりさん=当時(75)、珠洲市上戸町=をしのんだ。「6人きょうだいをしっかり育て、強い母親だった。『みんな元気にやってるよ』と伝えた」と語った。