第93回選抜高校野球 大阪桐蔭、初戦敗退 近畿大会の雪辱果たせず /大阪
<センバツ2021> 第93回選抜高校野球大会第4日の23日、大阪桐蔭は1回戦で智弁学園(奈良)と対戦。序盤からの劣勢をはね返すことができず、6―8で敗れた。昨秋の近畿大会決勝で敗れた相手との再戦に「どのくらい力がついたか試せる大事な試合」と臨んだが、雪辱は果たせなかった。【荻野公一、中島怜子】 一回からエース松浦慶斗投手(3年)の状態が芳しくない。相手のアルプス席から好機の定番曲、アフリカンシンフォニーが鳴り続けた。いきなり4点を失う展開に。打線は五回までわずか1安打と沈黙した。俊足の野間翔一郎選手(3年)の祖母恵美さん(80)は、午前3時半に家族と車で山口県を出て応援に。「足を全然生かせないが、焦らずチャンスをつかんでほしい」と反撃を待つ。 六回、2死から宮下隼輔選手(3年)と池田陵真主将(3年)の連続安打などで満塁とし、花田旭選手(3年)が打席に。花田選手が小学1年の時に、野球道具を書き記した紙を額縁に入れて部屋に飾る祖母(76)は、祈るような様子で自然に「満塁ホームラン打て。頑張れ」と声が出る。遊撃手の失策を誘って2点を返し、「ようやった旭」と褒めた。新型コロナ対策で声を出せない生徒の目がニコッとほころび、マスクからはみ出るほほが上がる。堅かった応援も一気に一体感が増した。 八回には藤原夏暉選手(3年)の適時三塁打と代打・小谷太誠選手(3年)の右前適時打で2点差に。母久美子さん(46)は「息子は控えでいることが多いが、今日は甲子園の舞台で代打で1本。報われた気がした」と声を震わせ、目頭を押さえた。しかし、追い上げもここまでだった。アルプス席へ向かってあいさつするグラウンドの選手たちに温かい拍手が送られた。 ◇念願のスタンド応援 女子チアリーダー部長・関口さん 「やっとここで応援できた」。女子チアリーダー部長の関口蒼依さん(3年)=写真=は、うれしそうに目を細めた。 大阪桐蔭へ入学する前は、地元群馬の中学で野球部のマネジャーを務めていた。遠く離れた大阪桐蔭を目指したのは、「春夏連覇できる強い学校の応援をしたい」と思ったからだ。チアの経験は全くなかったが、気持ちが揺らぐことはなかった。 1年の夏は大阪大会準々決勝で敗れ、2年の昨季は春夏とも大会が中止に。今春で引退する関口さんにとって、これが最初で最後の甲子園だ。「マスクをした状態でも、目だけで笑うことはできる」と、笑顔を絶やすことはない。念願だった甲子園でのスタンド応援の夢がようやくかなった関口さんは、最後まで笑顔でスタンドを活気づけた。 ……………………………………………………………………………………………………… ■熱球 ◇見つけた課題、夏へ 池田陵真主将(3年) 2点を追う九回2死走者なし。「(前打者の)宮下がゲッツー(併殺)に終わったので、チームの思いを背負って出塁しようと打席に立った」。4番の主将が三塁打で望みをつないだが、後続が断たれた。 「体から熱さが出ている。熱すぎる。責任感の強さが体から出ている」と西谷浩一監督が評する。昨夏の交流試合後に監督との面談で自ら主将を希望し、同学年の部員からも満場一致で推された。 練習でうまくいかないと「こんなんでいいんか」とチームメートに厳しく言う。その分、自身は苦しいトレーニングを率先してやり、生活面にも目配りして一体感をつくった。 この日は5打数3安打を上げるも、失策が失点につながった。「秋にはできなかった、最後の粘りができたのは良かった」と収穫も口にしたが、「守備、投手ともにミスが多く出た」。母浩子さん(46)が呼ぶ「野球小僧」が、見つけた多くの課題を持って夏に向かう。