ピアノ少女だった三宅宏実のDNAを覚醒させた16年前の転機
「やると言ったら聞かない性格」と自負する三宅宏実は、そこから埼玉栄、法政大、社会人と重量挙げ一筋。専属コーチはずっと父の義行さんで、まさに親子でウェイトリフティングの世界を極めてきた。 その父が教えるスナッチの極意は、「引いて入る」。バーベルを上に引き上げて、その真下に体を入れるという感覚だが、失敗すれば終わりの3回目のスナッチで81キロを見事に上げたタイミングは、まさにその父、直伝の「引いて入る」の体現だった。 その父も「よく練習してくれたから3回目が上がったんだと思う」と娘を絶賛した。 一度、三宅宏実に、ウェイトリフティングのどこが好きなのか?と聞いたことがある。 「競技の中で味わう安堵感と緊張感。そして練習を積み重ねれば、やった分だけ、必ず結果になって返ってくるところが魅力なんです。男性の競技イメージが強いですが、女性だってできるんだ! と思える点も、好きな理由のひとつですね。だから辞めようと思ったことは一度もないんです」 女子ウェイトリフティング界に2大会連続メダル獲得の金字塔を打ち立てた三宅宏実は、4年後の東京五輪について聞かれて、「まだわからない。日本に帰ってゆっくりと考えます」と答えた。4年後は、34歳。年齢的、体力的には、厳しいのかもしれないが、「大好き」という気持ちがある限り、4年後も東京五輪のプラットホームに、かわいい笑顔で立っているような気がする。