大変残念な中止…順天堂大“新病院”開院断念 800床で大規模、延期が続き…建設費が高騰、医療を取り巻く環境変化、順大の財政状況も厳しく 埼玉で高まっていた期待「申し訳ない」
埼玉県さいたま市の美園地区に800床の新病院開院を計画していた順天堂大学の代田浩之学長らが29日に県庁を訪れ、大野元裕知事に計画中止を報告した。同大は断念の理由に資金捻出が難しいとし、代田学長は「新病院の計画を断念するとお伝えに参った。これまでご支援いただいた県の皆さま、さいたま市の皆さま、ご期待をいただいた埼玉県民の皆さまに大変申し訳なく思っている」と話した。 順天堂大“新病院”完成イメージ図 外来棟、病棟、検査棟、大学院棟など立ち並ぶ【写真3枚】
会談は非公開で行われ、県保健医療政策課によると、代田学長は「学内を挙げて検討したが、建設費の高騰、医療機関を取り巻く状況変化があって、実現に持っていくことは困難となった」と述べたという。大野知事は「報告に対しては800床の大学病院開院への県民の期待は大きく、大変残念な中止であると申し上げた。遅れを受容したにもかかわらず、最終的に諦めなければいけなくなった報告は大変残念」と見解を述べた。 新病院の整備計画を巡っては、県内の医師確保困難地域への医師派遣などを条件に、2015年の県医療審議会で同大学による開院計画が採択され、県が18年に大学側と交わした確認書では、病院整備費用の2分の1を上限に補助するとしていた。度重なる延期の末に27年11月の開院を予定していたものの、7月末に大学側から県に対し、2186億円の総事業費と開院を20カ月延期する工期、「事業計画の見直しが必要との結論に至った」との通知が届けられた。
書面でも計画推進を前提とした、変更に前向きな姿勢が示されていたため、県は計画変更を希望する場合には申請書を速やかに提出することを要請した文書を8月26日付で発出。その後も申請書が提出されなかったことから、10月25日付で12月2日までに変更申請書を提出することを求めていた。 同大学は29日午後、ホームページ(HP)で声明を発表し、「24年4月から施行された医師の働き方改革への対応も含め、六つの医学部付属病院を抱える本学はかつてないほどの厳しい財政状況に直面している。当該事業に充当する予定の準備資金の確保および開設後の運営資金を捻出することが難しい事態となった(一部抜粋)」と決断に至った理由を説明した。