【インドネシア】JACとNNAがセミナー、税務や経済解説
インドネシアで会計・税務などを中心に手がけるコンサルティング会社ジャパン・アジア・コンサルタンツ(JAC)とNNAインドネシアは13日、税務や政治・経済動向などに関するセミナー「JAC―NNAセミナー2024」を首都ジャカルタのホテルで開催した。日系企業関係者ら約200人が参加した。 セミナーは3部構成で、税務のパートではJACの光武大地社長が、税務署が納税者に説明を求めるために送付する書簡「データおよび情報に関する説明要求書(SP2DK)」について解説した。SP2DKは最適な税収達成を支援するために規定された国税総局回状『2022年第5号』を根拠に発行される書類。今年のSP2DKの発行件数はすでに73件と23年通年の32件から2.3倍に増えていると説明した。 SP2DKには追加納税額が記載されている場合があり、その中央値は約5億6,890万ルピア(約547万円)に上るが、光武氏は「SP2DKには基本的に反論ができ、支払う金額も下げられると思って大丈夫だ」と話した。税務署側の確認ミスによる指摘もあるといい、SP2DKで聞かれる質問内容や指摘理由、それに対する回答内容については具体的な事例を挙げて説明した。 このほか光武氏は、財務省税務局が25年1月から導入する納税管理システム「コア・タックス・システム」について解説した。同システムは財務相令『24年第81号』を根拠に導入され、運用開始後は納税・申告期限が変更されるという。現在の個人所得税や国内サービス源泉税などは、納税が翌月10日、申告は同20日だが、納税・申告ともに翌月15日になると説明した。 政治・経済動向のパートでは、NNAインドネシアの京正裕之編集長が、10月20日にプラボウォ・スビアント大統領が就任した後の政治・経済動向について講演した。ジョコ・ウィドド前政権の路線継承を掲げて当選したプラボウォ氏は、45年までに先進国入りを目指す大方針を継続する一方、無償給食や産業の下流化などで独自色を出し始めていると説明した。 それを可能にしているのが、国会での実質的な「オール与党体制」と行政機構の改編、11月末の地方統一首長選挙でのプラボウォ氏を支援する政党連合の勝利などによって構築している盤石な政治体制だと指摘した。一方で、プラボウォ政権は食料やエネルギーの自給を最優先の政策としているため、東カリマンタン州で整備中の新首都「ヌサンタラ」の開発の動きは鈍くなっていると解説した。 産業動向については、新車販売が停滞する中で電気自動車(EV)やハイブリッド車(HV)などの電動車の販売比率が上昇していると説明。来年に新車市場が回復するかは、電動車への税制優遇措置の実施状況などを注視する必要があるとした。また脱炭素化を巡っては、バイオディーゼルの使用や再生可能エネルギーの導入の拡大を目指す一方で、今年の石炭の生産量は過去最大を更新し来年も大きく減ることはないとみられることから「政策的矛盾が起きている」と指摘した。 セミナーの第3部では、 北國フィナンシャルホールディングス傘下のコンサルティング会社CCイノベーションのシンガポール法人CCイノベーション・シンガポールの川倫明マネジング・ディレクターが、製造業の原価計算の進め方について説明した。 川氏は原価計算が収益改善の起点になるとした上で、生産量ではなく活動量に応じて計算する活動基準原価計算(ABC)に基づいて原価を把握し、具体的な改善活動や戦略を実行することを勧めた。