【RIZIN】鈴木千裕はなぜ金原正徳に1R TKO勝ちしたのか──チームで研究した「構え」と「リズム」と勝負どころ
◆かつての師匠・塩田の鈴木セコンドに、金原は「やりにくさは無かったけど──」
鈴木千裕が1R 4分20秒、TKO勝ちでフェザー級王座の初防衛に成功。 塩田は、かつての五味隆典のような鈴木の強みを語る。 「最後も千裕くんのパウンドの強さですね。グラップラー相手に上を取れたら、強いパウンドを打てば一気に行けるだろうという思いもありました。相手の下からの腕十字の対処も危なげなかったです」 ダウンから上体を上げ、座り込んで苦笑した金原に、鈴木は正座してハグ。金原は「ありがとう、頑張ってね」と声をかけ、その2人を塩田も見守った。 試合後、かつての古巣チームと対戦したことを金原は、「15年前の戦極でベルト獲った時に自分のセコンドについていた方が向こうのセコンドについているのは事実だし、だからと言ってやりにくいのは一切なかったですけど──逆に俺のことを知るからこそ、うまくつけ入る隙もあったと思うので」としながらも、「まあ、人なんてそんなに変わらないので、15年前だろうが自分のものって変わらないので、そういうのもうまく攻略されたというところはあるかもしれないです。でも自分はやりづらさはなかったですし、終わった後に『ありがとうございます』とお礼できたのでよかったです」と語った。 鈴木も「塩田さんは、やっぱり金原選手の恩師で格闘技の先生なので、同じものを学べているのは大きいですよね。塩田さんのMMAは世界に通用しますし、金原選手のMMAもUFCとか世界で通用させてきたので、何も間違っていなかったと思います」と新旧師弟対決を振り返った。 塩田は、「金原くんの若い時から一緒に世界に向けてやっていて、本当に強い選手だって分かっていたし、そういった選手を相手にしたことで、ともに研究していい結果が出たことで、いまはもう千裕くんが世界に向けてやれる選手と自信を持って言えます。 何より成長速度が速い。ちょっとおかしいくらいすごい(笑)。ピットブルを倒して、ケラモフを倒して、今回の試合が千裕くんの怪我で12月ではなくなったことは、僕は良かったと思いました。ほんとうに(短期間で)強くなるので。タイガームエタイに行っても一段階上がっている。ほんとうにみんな期待してもらっていいと思いますね。 パラエストラ八王子を出してから22年。本当にいろいろな事がありました。プロ1号の鹿又(智成)と試行錯誤し、金原(正徳)と世界を目指し、徳留(一樹)とはUFCでラスベガスの舞台に立ちました。昨日はRIZINで高木凌が勝利して、鈴木千裕が王座防衛。2人とも24歳、これから2人とも世界で活躍していくと思います」と、新世代に期待を寄せた。 ◆『日本のRIZIN』を俺が『世界のRIZIN』にします(鈴木) マット上で鈴木は「言ったろ?『1R KO勝ち』で。有言実行。“絶対王者”になるって。『日本のRIZIN』を俺が『世界のRIZIN』にします! 俺について来い!」と叫んだ。 その光景がリプレイされているモニターをバックに金原は、ここまでのキャリアを記者陣に問われ、「本当に諦めずやること以外に言葉はなくて。自分はずっと光を浴びた選手ではないし、メジャー団体が無くなることなど色々経験して、こうしてRIZINでメインイベントを張らせてもらえるのは光栄なことで、決していいことばかりではなかったけど、頑張ればチャンピオンシップを戦える、報われることを、辛い他の40代の人に伝わってくれればいいなって思います」と語り、「でも年齢を言い訳にせずに、“MMA”で勝ちたかったな、というのはあった。でもできなかったんで“はい”って感じです」と苦笑。 「鈴木が日本MMAを背負えるか」との問いに、「俺に勝ったんだから、背負ってもらわないとね! 困りますよ」と答えている。 RIZINフェザー級王座を防衛した鈴木は、Bellator王者のパトリシオ・ピットブルとの再戦も浮上するなか、クレベル・コイケvs.ファン・アーチュレッタ、朝倉未来vs.平本蓮戦の勝者との対戦、ヴガール・ケラモフ、ビクター・コレスニック、イルホム・ノジモフらの台頭も見据え、「世界」と戦うことになる。 いまだ歪だが、突出した武器を持つ鈴木が、MMAとしての強さを増し、金原が戦ってきた世界を、いかに実現させて絶対王者となるか。“天下無双の稲妻ボーイ”の今後に注目だ。