STARTO社が「チケットの悪質転売ヤー」の身元開示請求、横行する高額転売をどうしたら撲滅できるのか?
●禁止法があるのに悪質転売ヤーはどうしてなくならない?
――チケット不正転売禁止法が施行されたのにもかかわらず、こうした高額チケット転売は横行しています。どうしたら不正なチケット転売を撲滅できるのでしょうか。 本当に困った事態ですが、抑え込むために第一に重要なのは、チケット転売サイトが誠実に対策に協力することです。 なぜこれほど買占めが起こるかといえば、容易に高額で転売ができるからです。なぜ容易に高額転売できるかといえば、転売サイトが、身元を隠して出品して高額の購入者と結びつき、安全に代金を受け取る手段を提供しているからですね。個別に相対で販売することは、個人転売ヤーにも購入者にもハードルが高いのです。 転売サイトは、匿名の出品者の身元情報を知るほぼ唯一の存在です。彼らは、出品者がどれだけ高額転売を繰り返しているか(つまり不正転売禁止法の違法条件を満たしているか)などの情報を握っています。また規約違反の高額転売の出品を止められるのも彼らです。 しかし、多くのケースでは主催者から通知や要請を受けても、全く高額転売の阻止に手を貸そうとしません。むしろ、彼らの手数料は高額な転売ほど上がりますから、高額転売を煽って容易にしながら、大きな利益を上げていることになります。 彼らが、買占めを伴うような悪質な高額転売を出品禁止にすれば、事態は大きく解決に向かって動くでしょう。また、高額転売を繰り返す出品者(「業」として高額転売をおこなう不正転売禁止法違反の出品者)の情報を主催者や警察に開示すれば、摘発は現実味を帯びるでしょう。 このほか、チケット価格の更なる弾力化、主催者の更なる努力など、考えられる対策はありますが、まずは転売サイトの協力が最重要かと思います。 ――このほか、チケット不正転売禁止法違反に対して、STARTO社がとれる法的措置はどのようなものがありますか。 前述の通りですので、不正転売禁止法違反の幇助や、盗品等有償処分あっせん罪(刑法256条2項)などで、悪質な転売サイトを刑事告訴・告発することも考えられるでしょう。 盗品等有償処分あっせん罪の方は、主催者への詐欺によって入手したチケットは同条1項の「盗品その他財産に対する罪に当たる行為によって領得された物」にあたりますから、その有償の譲渡をあっせんした場合、最高で懲役10年などの処罰の可能性があります。 警察も、高額転売問題の抜本解決に向けて、より積極的な対策に乗り出すべき時だと感じます。 【取材協力弁護士】 福井 健策(ふくい けんさく)弁護士 骨董通り法律事務所 代表 弁護士・ニューヨーク州弁護士。日本大学芸術学部・神戸大学大学院・iU ほか 客員教授。専門はエンタテインメント法。内閣府知財本部・文化審議会ほか委員。「18歳の著作権入門」(ちくま新書)、「エンタテインメント法実務」(編著・弘文堂)、「インターネットビジネスの著作権とルール(第2版)」(編著・CRIC)など知的財産権・コンテンツビジネスに関する著書多数。X:@fukuikensaku 事務所名 :骨董通り法律事務所 事務所URL:https://www.kottolaw.co